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「おっきいだけって言われたくない」身長210cm牧大晃(高松工芸・3年)を変えた、高橋藍ら先輩たちの優しい言葉《春高バレー》
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT
posted2022/01/04 11:03
昨年度大会でも大きなインパクトを残した高松工芸・牧大晃。今年はキャプテンとしてチームを牽引する
牧は1月5日に開幕する春高バレーの最注目選手だ。バレーボール専門誌の表紙も飾った。
「恥ずかしいっすね」と苦笑する。
「自分、人見知りで、緊張しいなんで。目立ちたくないんです。幼稚園の頃にはもう、周りの子より頭一つ二つぐらい大きくて、昔からずっと見られていたからだと思うんですけど、人に見られるのが嫌いで(苦笑)」
人並み外れた長身がコンプレックスで、注目されることや、人の視線を浴びることがずっと苦痛だった。少しでも目立たないようにと、知らず知らずのうちに猫背になっていた。だが今、牧は少しずつ変わりつつある。
そのきっかけも代表合宿だった。
「堂々としろ」
練習後に一緒に炭酸泉につかりながら、他愛のない会話の中で、藤井直伸(東レアローズ)と大塚達宣(早稲田大)に言われたその言葉が、牧の心に響いた。
「『堂々としろ』と言ってくれたのは、すごく大きかったです。『自分、変わろっかな』と思えるようになりました。それからは堂々とするように意識しています。まだ人見知りではあるんですけど(苦笑)。人前に出るのは、まだ嫌ですけど、苦ではなくなりました」
「自信なさそうにやっている感じがした」
セッターの藤井はこう回想する。
「彼と初めて一緒にやって、ポテンシャルが高くてすごくいいものを持ってるなと思いました。2メートル10センチの選手という感じじゃなくて、器用に何でもこなせる。動きが本当にきれいで柔らかい。高校生であれだけしっかりできていたら、この先いろいろな戦術や技術を覚えていけばもっといい選手になると感じました。
ただ、年上の、テレビで見ていた選手たちと一緒にやるということで緊張もあったからだと思うんですけど、自信なさそうにやっている感じがしたし、自分が大きいということを結構気にしていました。『大きいのはあんまり……』みたいな感じで。だから、『別にいいじゃん』と。『そんなの海外行ったら当たり前だし、バレーボール選手として、大きいのはすごくプラスなこと。自分の武器なんだから、自信持っていいところだよ。2メートル10センチらしく堂々としとけよ』みたいな感じで言いましたね。
まあまだ18歳ですし、人目が気になるとは思うんですけどね。でもやっぱりこれから日本の未来を担っていく存在でもあるので、それは自覚してほしいな、というのもちょっとあって。別に重々しく言ったわけじゃなく、普通の会話の中で軽く言っただけなんですけどね」