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ダルビッシュも認めた大嶺祐太の剛速球…“離島のヒーロー”が千葉ロッテで過ごした15年間「また起き上がって立ち向かう」《中日と育成契約》
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2021/12/28 17:07
15年在籍したロッテを離れ、新天地・中日で再スタートを切る大嶺祐太
今季は8試合に登板をして1勝1敗で防御率4.09。17年以来となる貴重な白星を手に入れることも出来た。残念ながらオフに来季の戦力構想から外れ、ドラゴンズに育成選手として移籍することになった。
だが、まだまだ出来るという確かな手ごたえを掴めたシーズンでもあった。
「体は元気。一日でも早く支配下(登録選手)になれるように元気よくやっていきたい」
背番号は「211」。マリーンズ入団時は「1」。そこから「11→30→126→64」と何度も変わった。背番号の移り変わりからも、ここまでのプロ野球人生がいかに紆余曲折なものであったかがうかがい知れる。
「残り少ない野球人生の中で、こういう機会を与えてもらったので、一生懸命ドラゴンズのために投げていきたいと思います」とドラゴンズの入団会見で大嶺は前を向いた。
『爬竜舟(はりゅうせん)』という曲がある。沖縄県石垣市出身のバンドグループ、BEGINが2010年9月8日に発売したアルバム『ビギンの島唄 オモトタケオ3』の中に収録されている。この曲には、BEGINから大嶺へのエールも込められていた。同じ石垣島出身で、07年オフに都内で行われたライブをきっかけに交流を深めてきた。大嶺はこの曲を登板する際の登場曲に使用していた時期もあった。
「沖縄には海の安全や豊漁を祈願する舟の競争があって、これに参加する舟のことを爬竜舟と言うんです」
大嶺は独特の淡々とした落ち着いた口調でこの曲のタイトルの意味を教えてくれた。そして言葉を続けた。話の核心の部分を伝える時の大嶺は一段とゆっくりと話をするのが特徴だ。
「この競争を見に来てくれるお客さんが一番沸くのは、どの場面だと思いますか? 舟が転覆して、それを必死に起き上がらせてまた漕ぎ出す。そういう場面なんですよ。僕の野球人生も一緒。失敗しても、苦しく辛い日々が続いても、また起き上がって立ち向かう。そういう姿をファンは見てくれている」
不調にあえいだ。故障にも見舞われた。自分を見失いそうになった時もあったが、この歌に込められたメッセージはいつも大嶺の心の中心にあった。必ず起き上がって立ち向かう。その思いはドラゴンズに移籍が決まった今、さらに大きなものになっている。
もう一度、スポットライトが集まるマウンドに上がる。次の仕事場は慣れ親しんだZOZOマリンスタジアムではなくバンテリンドーム。石垣島を旅立って15年が経ち、若者はベテランと呼ばれる年齢に差し掛かった。順風満帆とは程遠いほどの苦労を重ねたことで人間的な魅力は増した。そして新たな旅に出た。大嶺祐太の旅はまだまだ続く。