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プロ野球PRESSBACK NUMBER
オリックス優勝の起爆剤・宗佑磨が語る“7年目の覚醒”と“昔の自分に言いたいこと”「僕の守備は忠実じゃないと思われるかもしれないけど」
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph byNanae Suzuki
posted2021/12/27 17:08
今季大ブレイクを果たしたオリックス・宗佑磨。シーズンを終えた心境と高校時代のエピソードを語ってくれた
今季はC組からスタート。「もしかしたら出るところないかも」
思えば今季は脚のケガで春季キャンプに参加せず、若手や育成選手が中心の「C組」からのスタートだった。宗の心の中に初めて覚悟という言葉が浮かんだという。
「7年目で年数的にも若くない。今年はもしかしたら出るところないかもしれない。もう割り切って練習するしかないと思いました」
1日1本。大きな目標をあえて立てず、目の前の試合に集中して1日1本ヒットを打つことに注力した。
安定して結果が出だしたのが5月。11日に福田周平が一軍再登録され1、2番コンビが固定。2番打者として進塁打に徹したことが逆に安打を生み、16試合連続安打につながった。高校時代に慣れ親しんだ横浜スタジアム(DeNA戦)では13打数6安打と気を吐いた。
「守備からリズムを作るという自分のスタイルができ、それが打撃に活きたんだと思います」
リーグ優勝への快進撃も、このあたりから加速していった。
後輩・西浦颯大の引退時に円陣で呼びかけたこと
9月24日。ともに切磋琢磨してきた後輩・西浦颯大が、難病のため22歳の若さで引退発表。この出来事も「覚悟」を強めた一つの節目となった。翌25日、宗は楽天戦(京セラ)での円陣で声出しを担当。チームメートにこう呼びかけた。
<まぁ、おのおの考えていることはいろいろあると思いますが、まずこの順位で野球ができていることに全員感謝して、まず野球をやっていきましょう。(間をおいて)昨日、僕らも一緒にやってきた西浦君が引退を発表しました。ああやって彼みたいに野球がしたいと思っている若い子でも、野球ができないことになってしまう時が、みなさんあります。でも、そういうのは、いつなるか、みんなわからないんですよ。今日ケガしてできなくなるかもしれないし。そういうことを全員、熱い気持ちをもって、1試合1試合取り組んでいってください>
「いつ(そう)なるか、みんなわからない」。心から出た言葉だった。
シーズン終了後の話になるが、親友・鈴木優の戦力外通告も目の当たりにした(その後、巨人と育成契約)。鈴木は15年同期入団組。宗とは同い年でいちばん仲が良かった。リーグ優勝の裏で、いろいろな思いが去来するシーズンでもあった。
「いま、野球ができていることは当たり前じゃない。プロ野球選手が自分の意思で野球を辞められることってほんのわずかしかないですよね。まだまだいけるって思っている選手でも、突然クビになったりする。そういう意味でも自分自身も考えさせられる1年でした」と表情を引き締める。