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汚れた大物と殿堂入りのラストチャンス。ボンズやクレメンス、Aロッドに復権の機会は与えられるのか?
posted2021/12/25 06:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
殿堂入り選手の発表時期が近づいてきた。発表されるのは2022年1月25日。叙勲の儀式などに興味はない、と思う方もいるだろうが、殿堂入り選手の系譜をたどることでMLBの歴史が見えてくるという事実は忘れないでおきたい。
今年はとくに興味深い。アレックス・ロドリゲス、デヴィッド・オルティースといった大物選手が初めて投票対象となる(10年以上現役を務め、引退後5年以上経てば有資格者。投票するのはBBWAA=全米野球記者協会の会員)一方で、バリー・ボンズ、ロジャー・クレメンス、サミー・ソーサ、カート・シリングといった歴史的選手(薬物使用や問題発言さえなければ超一流だった)が最後のチャンス(得票率が5~75%の有資格者は10年間投票の対象となる)を迎える。マニー・ラミレスやゲイリー・シェフィールドといった一流どころにも、まだチャンスが残っている。
要するに、最初のチャンスも最後のチャンスも興味深いのだ。いま挙げた選手以外にも、新顔ではジミー・ロリンズやライアン・ハワード、ジャスティン・モーノーといったMVP経験者の姿がある。ティム・リンスカムとジェイク・ピーヴィはサイ・ヤング賞を受けている。カール・クロフォードやプリンス・フィルダーの名前も記憶に新しいはずだ。そんな一流選手にとっても、殿堂入りの敷居は相当に高い。
野球の神様たちが集うところ
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史上初めて殿堂入りを果たしたのは、「野球の神様」と呼ばれる大選手たちだった。初年度は1936年で、この年に入所したのはタイ・カッブ(得票率98.2%)、ベーブ・ルース(95.1%)、ホーナス・ワグナー(95.1%)、クリスティ・マシューソン(90.7%)、ウォルター・ジョンソン(83.6%)の5人だ。
MLB.comのランク付けによれば、彼ら5人の通算WARの集積は737にのぼる。これは史上最高(ベーブ・ルース=183.1、ウォルター・ジョンソン=164.8、サイ・ヤング=163.6が通算WARの個人ベスト3)だ。
これに続くのは、ルー・ゲーリッグ、ジョージ・シスラー、ウィリー・キーラーらが入所した39年の565。次いで、ジョー・ティンカー、ジョニー・エヴァース、フランク・チャンスのカブス鉄壁の併殺トリオら10名が選ばれた46年の543。
ただ、これは通算WARの総和を計算したランク付けだから、その年に入所した選手の数によっても左右される。テッド・ウィリアムズ(通算122.1で史上14位)ただひとりが入所した66年などは63位に沈んでいる。
2022年の場合はどうなるだろうか。