そのフリーは『火の鳥』。冒頭の4回転トウループに成功。続く4回転トウループ－ダブルトウループも決める。そのままプログラムの世界に引き込んでいく。

　再び会心の演技を見せた町田は、晴れやかな、どこか解放されたような表情を浮かべた。

　試合は終わった。優勝したのは羽生結弦。そして町田は2位。全日本選手権で初めての表彰台だった。

「本当に恋焦がれたメダルだったので、とても幸せですし、間違いなくこの全日本は、僕の競技人生の中で最大の、一番すごいイベントだったと思うので、その中で自分の演技ができて、表彰台に昇ることができて、心からうれしいです」

「僕の競技人生の中でオリンピックを狙う最後のチャンスだったので、すごい覚悟の中で演じたつもりです」

「人事はすべて尽くしましたし、僕ができることはすべてやったつもりです」

「1年前のあの位置から、五輪でメダルに手が届くところまで…」

　目指していたソチ五輪の切符をつかんだ町田は言った。

「僕の1年の歩みを見て、多くの後身のスケーターが、自分にもできる、と希望を持ってくれたら、僕はもう幸せです。1年前のあの位置から、オリンピックでメダルに手が届くところまでたどり着いたのだから、『僕にもできたんだから、あなたにもできる』と僕は言いたい」

　競技人生のすべてを懸けて、死ぬ気で1年を過ごしたスケーターの輝き。それもまた、全日本選手権の歴史に刻まれる光景だ。

　2021年の全日本選手権では、スケーターの、どのような姿が記憶されるのだろうか。

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