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監督・落合博満「他の誰かのために野球をやるな」「数字を上げることだけを考えろ」 井端弘和や和田一浩らの覚醒を導いた指導法とは
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNaoya Sanuki
posted2022/01/23 17:05
殊勲打を放った和田一浩を笑顔でねぎらう落合博満監督
「お前は競争させねえからな」
「自分の数字を上げることだけ考えろ」
と、中軸打者として結果を残すことを求めたのだ。
3度の三冠王など、稀代の名打者である落合にそう告げられる重圧は計り知れないものがあるが……和田は結果を残した。2010年は打率.339、37本塁打93打点と圧倒的な成績を残して、セ・リーグMVPに輝くなど長年にわたって活躍。さらには落合退任後の2015年、6月11日のロッテ戦で通算2000本安打を達成した。42歳11カ月での到達は史上最年長だった。
「打ってみての実感ですか……わからないですね。やる前とほとんど変わりません」
2000安打時の和田のコメントだ。落合中日体制での積み重ねが、和田をさらなる大打者へと導いた。
井端が感じていた“お前は守りさえしっかりしていれば”
<名言3>
お前は守りさえしっかりしていれば認めるよ、と言ってくれている気がしたんです。
(井端弘和/Number614号 2004年10月28日発売)
◇解説◇
落合は選手たちに対して常に「勝たせるのは俺の仕事だ。好き嫌いはしない。良い者を使う。だから自分の成績だけを考えてやれ」と伝えていた。時には説明もなく交代を命じられ、反発する選手もいたというが、落合は機を見てさりげなく課題を呟いたともいう。独特だが、落合らしい指導法である。
その落合ドラゴンズのスタイルを象徴するプレーを見せ続けたのが、荒木と井端の「アライバコンビ」だった。打てば1、2番でチャンスメイク、守れば完璧なコンビネーションでアウトの山を築き上げ、ナゴヤドームを沸かせ続けた。
落合体制初年度となった2004年、井端は落合も認める安定感ある守備に加えて、規定打席到達での打率3割も達成した。
「他の誰かのために野球をやるな。自分のために家族のために野球をやれ」
こう落合監督は選手たちに伝えていたそうだ。井端のポテンシャルはこの環境の中で引き出されていった。
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