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監督・落合博満「他の誰かのために野球をやるな」「数字を上げることだけを考えろ」 井端弘和や和田一浩らの覚醒を導いた指導法とは
posted2022/01/23 17:05
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Naoya Sanuki
<名言1>
ものすごい重圧だった。人生初めてです、こんなの。
(岩瀬仁紀/Number691号 2007年11月8日発売)
◇解説◇
2007年、中日vs.日本ハムの日本シリーズ第5戦。優勝に王手をかけた中日の先発・山井大介は8回までパーフェクトピッチング。日本シリーズ史上初の完全試合達成かと思われたが、落合博満監督は9回に山井に代えて、岩瀬をマウンドに送り込んだ。
マウンドを譲られた守護神は、強烈なプレッシャーと戦いつつ、日本ハム打線を三者凡退に抑えて、日本一をもぎとった。
日本シリーズ史上初となる完全試合直前での継投。この落合采配に野球評論家、識者らは賛否両論となった。しかし、ショートを守っていた井端弘和はこのように話していたことがある。
「ずっと最後は岩瀬さんで勝ってきたチームだし、山井には失礼だけど、完全試合だろうと、正直、岩瀬さんの方がはるかに信頼があるし、最善の策だと思っていました。まして50年以上も日本一になっていない球団が勝つチャンス。その試合で勝つために、あそこで岩瀬さんを出すのは当然です」
和田に対して落合監督が送ったメッセージ
<名言2>
プロ入りしたときには2000本安打なんて、異次元。目標ですらありませんでした。
(和田一浩/Number939号 2017年11月9日発売)
4回のリーグ優勝を果たした「オレ竜」落合博満監督のチームには、井端に荒木雅博、森野将彦に谷繁元信と、勝ち方を知っているメンバーがそろっていた。その中で試合を決める役割を託されたのが、西武ライオンズから中日の一員になった和田だ。
もともとは捕手でプロ入りしながらも、打撃センスを買われて外野にコンバートされ、首位打者獲得や3年連続30本塁打超、4年連続3割など結果を残してきた。そんな和田が2007年オフに「自分が獲得した権利を行使しなければ、野球人生に悔いが残る」と話し、FA宣言した。
最終的には中日へと移籍した和田だが、愛着のある西武に残りたいという思いもあったようだ。ウェットな情緒と、自分を高く評価してくれる球団でプレーしたいというドライな欲求の狭間で、心が揺れ動いたうえでの決断だった。
そんな経緯で加わった和田に対して、落合監督は意外なメッセージを送る。