そんな増田は、大学時代にずっとマッチアップしてきた前田がチームメートになったことを歓迎している。川崎は帰化選手のニック・ファジーカスがいることでビッグラインナップなど“実質オンザコート3”を組むことが多く、篠山と藤井の2ガードの時間帯も間々ある。なおかつ、長谷川技や熊谷尚也といったサイズの近い選手もいるところに前田が加わると、増田の心中にはプレータイムの減少という懸念も生まれそうなものだが、本人は「前田さんに限らず、誰が入ってきても同じこと」と意に介さず、「賢次さんがそれを大切にしているので、練習も試合と同じようなインテンシティでやっている」とチーム内の競争の激しさを強調。「僕が頑張って下から突き上げることで周りも良くなると思う」という言葉からは、最年少ながらチームに良い影響を与えたいという意識の芽生えも感じ取れる。前田にとっても増田にとっても、川崎というチームは自身をステップアップさせ得る環境が整っているということだろう。

成長の先にある日本代表

　ステップアップした先には新たな地平も開けてくる。B1のバイウィークの間に行われた日本代表の国際試合を見たという前田は、今夏の東京オリンピックで女子を銀メダルに導き、9月から男子に転じたトム・ホーバスHCのバスケットを「自分に合う」と感じたそうだ。そして、「リーグで結果を残さないと合宿にすら呼ばれないと思いますが、今のメンバーを見ると自分にもチャンスがある」と代表入りを目指すことを力強く宣言。「試合では常に『俺を使え』と思ってます」という強気な一面もある前田は、これから猛烈にアピールしていくに違いない。

　増田もまた、「もちろん光栄ですし、ファンの皆様やいろんな方の支えがあって獲れた」と感謝の意を示した上で「正直、昨シーズンいただいた個人賞に関してはほとんど意識していない」と語り、「新人賞ベスト5の5人以外にも活躍した選手がたくさんいて、そこに上下はない。賞をいただいたんですけどいただいてないものと思って、満足せずにやっていきたいです。前だけ向いてやっていきたい性格なので」とより一層の成長を誓う。

　激しい競争に身を投じた2人がどのような姿を見せるのか、それはおそらくリーグと天皇杯の2冠を狙う川崎の成績が雄弁に物語ってくれるに違いない。

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