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《単独インタビュー》DeNA牧秀悟は“鮮烈な1年目”をどう振り返る? 打率.314&“長嶋茂雄超え”も「目の前で優勝されたことのほうが悔しくて」
posted2021/11/23 11:06
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph by
Sankei Shimbun
――もし自分がその立場だったら、どうする?
プロ野球のペナントレース中、そう考え込んでしまうようなシチュエーションをしばしば見かける。
レギュラーシーズン残り5試合の時点で、打率.301。苦労して3割に到達し、規定打席は十分にクリアしている。しかも、その選手は初めてプロでフルシーズンを戦うルーキーである。
「残り試合をすべて休んで、打率3割をキープしたい」
そんな思いが頭をよぎったとしても、責められないのではないだろうか。
「『出続けて3割をキープしてやる』と思っていました」
だが、このルーキーは違った。
「休んで3割をキープしたい思いはまったくなかったですね。ずっと使ってもらっていたのに、自分の記録のことだけで他の人に出てもらうなんて失礼ですから。むしろ1年の最後まで試合に出て、結果がどうなるか知りたかったです。『出続けて3割をキープしてやる』と思っていました」
キープしてやる――。ルーキーはそう言った。だが、実際にはキープどころか、残り5試合で19打数12安打、打率.632という驚異的な追い込みで打率を.314まで高めてフィニッシュした。
本当に、この選手は新人なのか――?
2021年シーズン、DeNAのドラフト2位ルーキー・牧秀悟について、そんな感想を抱いた野球ファンは多かったに違いない。
身長178センチ、体重93キロの厚みのある体、どんな状況でも感情のゆらぎが読み取れない佇まい。本来であれば何年もかけて滲み出てくるような職人ならではの渋みが、すでにこのルーキーには宿っている。
1年目の牧が残した“驚きの数字”
今年はセ・パ両リーグともに、「ルーキー大当たり年」だった。
シーズン序盤は佐藤輝明(阪神)が日本人離れした雄大なスイングで本塁打を量産。夏場には栗林良吏(広島)、伊藤大海(日本ハム)の両右腕が東京五輪代表で活躍、金メダル獲得に貢献した。他にも盗塁王を獲得した中野拓夢(阪神)、10勝をマークした伊藤将司(阪神)、即戦力の評判に違わぬ実力を見せた早川隆久(楽天)と、例年なら新人王を受賞してもおかしくない存在が続出した。