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青学大関係者「あの時点で、駒大は“ない”と思いました」 箱根駅伝も“駒大vs.青学大”の2強対決が有力だが…不気味な1校の存在
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJIJI PRESS
posted2021/11/08 17:02
全日本大学駅伝。7区で並走する駒大の田澤廉(3年)と青学大の近藤幸太郎(3年)
2区の負債は3区で岸本大紀(3年)が日本人トップの区間3位、4区で高橋勇輝(4年)、5区で佐藤一世(2年)がそれぞれ区間賞の走りで負債を返済して3位へと浮上したが、6区でガタンと順位を落とした。
それでも7区を走った近藤幸太郎(3年)は田澤と同時スタートとなり、厳しい展開になると思われたが、わずか18秒遅れの区間2位。これは立派な走りだった。田澤に離されたものの、原監督が「近藤は学生トップクラスの力があることを証明してくれたと思います」と高く評価したように、近藤の挽回力は極めて高く、エースらしい選手が登場した。
つまり、今回の全日本に限って言えば、挽回力を持った2校が最終8区で息詰まるデッドヒートを展開し、ラスト2kmでの余裕度の違いで、駒大が逃げ切ったということになる。
箱根駅伝も「駒大vs.青学大」が有力だが…
いよいよ、これから「箱根モード」へと展開していくわけだが、現状の戦力ならば、どの学校にもミスは出ると想定される。
問題はミスをカバーする挽回力で、負債が生まれた時に、返済パターンを持っている学校が上位に来る。パターンは2つある。
・一括返済型
・段階返済型
一括返済が可能なのは、田澤、近藤レベルのランナー。
段階型は、今回の青学大のように2区間、3区間でしっかりと堅実に負債を返していく。これは選手層が厚くなければ出来ないことで、これが可能なのは青学大と、ケガ人が戻ってきた場合の駒大だ。他の学校の挽回力は、ややパンチ力に欠けており、ということは、箱根駅伝でも駒大と青学大のマッチレースになる公算が強いというのが私の見方だ。
ところが、一校だけ、今回の全日本で挽回力を十分に発揮していない学校がある。
東京国際大だ。
この学校には、田澤、近藤を超える挽回力を持つイェゴン・ヴィンセント(3年)と、出雲駅伝では3区でトップに立って勝負を決め、今回も6区で区間賞を獲得し、挽回力を見せた丹所健(3年)がいる。
本来、このふたりを7区、8区に並べていれば、優勝も夢ではなかったはずだ。しかし、大志田秀次監督はフルレンジの挽回力を封印し、7区に野澤巧理(4年・区間6位)、8区に宗像聖(3年・区間12位)のふたりを起用した。
この意図は、なにか?
おそらくは、箱根に向けてこのふたりに経験を積ませ、チームとしての底上げを図ったのだろう。げに、恐ろしき戦略だ。駒大、青学大に総合力では及ばないだろうが、突出した挽回力を持つ2人がいる以上、ゲームに大きな影響を及ぼすことは間違いない(ヴィンセント、丹所が3年ということは、来年度は三冠が有望だろう)。
駒澤、青山学院、そして東京国際。
2022年の正月に向け、この3校の挽回力を軸にして、これから各校が強化、戦術、プラン、合宿、あらゆる要素をごった煮にして走り出す。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。