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亀井善行39歳「若手はライバルじゃない」なぜ亀ちゃんは巨人軍で17年間も生き残れた? 大物ドラ1もFA組も…“亀井に負けた”外野手たち 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph byNanae Suzuki

posted2021/10/26 11:05

亀井善行39歳「若手はライバルじゃない」なぜ亀ちゃんは巨人軍で17年間も生き残れた? 大物ドラ1もFA組も…“亀井に負けた”外野手たち<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

10月23日のヤクルト戦後、亀井善行(39歳)の引退セレモニーが行われた。ファンにお別れの挨拶をする亀井

「彼らのことは、ライバルだとは思っていないです。年齢から見たら、彼らが出た方が絶対にいいんです。ましてや僕は、今年の前半戦は代打でやってきている人間。逆に言えば、前半戦彼らがスタメンで出ていたにもかかわらず、結果が出なくて後半戦は出られなくなった。その代わりに僕が出ているわけです。そこは“あいつら、何してんねん”と思うし、早く僕を押しのけて出てきてほしいです」(「G FAN」より)

「彼らが出ることによって、ジャイアンツの未来も変わってくる」とまで言い切る生え抜き最年長選手の存在。早く俺を超えていけ。それが組織のためになるのだから……。若手時代は「もっとやれる」と檄を飛ばされていた男が、ベテランとなり「まだやれる」と大きな拍手を送られる令和の東京ドームの風景。19年オフの契約更改では、球団史上最も遅くプロ16年目に年俸1億円に到達して、20年には37歳11カ月で通算1000安打を放ち、21年の通算100号アーチも38歳10カ月の球団最年長記録だった。もちろん苦楽を共にしてきた原監督からの信頼も絶大だ。

原監督「困ったときには亀ちゃん」

「亀ちゃんは僕の中ではそういう代打の切り札的に表に出して戦うよりは、困ったときには亀ちゃんがいるという存在なんですよ。1番打者にしても5番打者にしても、外野のポジションにしても、ライトであってもレフトでも、必要ならばファーストでも、ね。彼のそういう存在感というのは、チームにとって滅茶苦茶、大きいんです。滅茶苦茶、大きい!」(「NumberWeb」原監督インタビューより) 

 キャプテンシーとはまた違う、頼れるカメチャンシー。今季開幕戦では、代打で通算7本目(球団2位タイ)のサヨナラホームランを放ってみせた。気がつけば、82年組で同い年の盟友・内海哲也は西武へ移籍。先を走っていたライバル長野も丸佳浩の人的補償で広島へ。同時期にブレイクした松本哲也はすでに引退してファームのコーチだ。FAで移籍してきた陽岱鋼や梶谷隆幸にもポジジョンは譲らず、ギャレット・ジョーンズやレスリー・アンダーソンら数多くの助っ人が外野を守ったが、あくまで一時的なものだった。同時に大田泰示、橋本到、中井大介といった一昔前に将来のチームの中心を期待された90年前後生まれの元期待の若手選手たちは、伸び悩むと同時に外野競争で「亀井に負けた」のである。

 つまり、同世代のライバルに粘り勝ちし、補強組にもポジションを譲らず、若手の壁になり続けた背番号9。やがて誰もいなくなり、亀井善行だけが残った。阿部や坂本のような王道を歩む早熟のスター選手がいる一方で、挫折を繰り返しながら決して諦めなかった亀井は、喜びも苦しみもファンと感情を共有してきたわけだ。選手の入れ替わりが激しい21世紀の巨人でキャリアを全うする、叩き上げのフランチャイズ・プレーヤーは本当に貴重だった。

「誰だあれは?」17年前の中央大学4番ライト

 そして、2021年10月23日ヤクルト戦、本拠地最終戦の東京ドームで亀井善行の引退セレモニーが行われた。

【次ページ】 「誰だあれは?」17年前の中央大学4番ライト

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