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他球団スカウトの“後悔”「タイガースはうまいことやったな~」ドラフト5日後に完全試合の“ドラ3左腕”…ドラフトウラ話《阪神編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/27 17:05
阪神から3位で指名された新潟医療福祉大・桐敷拓馬投手(178cm90kg・左投左打・本庄東高)
「でもね、遅かった。決定権を持ってる人に見せられない。ドラフトまでで今日が最後のチャンスだった。上武大のグラウンドで、この時間にブライト健太(中日1位指名)の試合やってるから、えらい人、みんなそっちに行ってますから、今日は」
そしてドラフトの日。今年も、即戦力を期待するサウスポーは、人気が高かった。
1位指名で、その名を呼ばれた西日本工業大・隅田知一郎(→西武)、関西学院大・黒原拓未(→広島)、法政大・山下輝(→ヤクルト)は、全国の舞台や人気リーグでその実力が認められていたサウスポーだったし、2位で指名された筑波大・佐藤隼輔(→西武)、三菱重工West・森翔平(→広島)、JR東日本・山田龍聖(→巨人)、創価大・鈴木勇斗(→阪神)は、もともと上位候補に挙げられていたか、直近の都市対抗予選でその成長ぶりを各球団が確認済みのサウスポーだった。
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新潟医療福祉大・桐敷拓馬が阪神に指名されたのは、そのあとの3位指名。サウスポーの通算8番目だった。
「もったいないことしたかな……と思いますね。思いますけど、これがドラフトでしてね。ちょっとしたボタンのかけ違いじゃないけど、たまたま見た試合で良ければ評価が上がるし、たまたまその日に別の所に行ってれば、評価はそのまんま。“たまたま”の繰り返しで、縁が切れたり、つながったり……ですよ。ヨソに獲られた選手をうらやましがるのは今日までにして、ウチが獲った選手を一丁前にすることのほうを考えないとね。それに、もう次のドラフトが始まってますから。新聞記事の〆の文句じゃないけど、そう言って、スカウトは前を向いた……ですよね」
自らが推薦した選手が存分に活躍し、幸福なプロ野球生活を続けてくれることを願いつつ、スカウトたちは入団交渉の季節を迎える。<ドラフトウラ話・楽天編から続く>
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