ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
単独1位指名・達孝太(天理)の誕生日とファイターズの不思議な縁、編成トップの“決断の真相”とは<広報が明かすドラフト裏側>
posted2021/10/21 11:06
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
KYODO
運命の1日――。
そう称されるプロ野球界のビッグイベント、ドラフト会議で現実に目の当たりにした。人との縁が結ばれる時には、解明できないような不思議な巡り合わせが起こることがある。
10月11日、午後5時。2021年のドラフト会議が開催された。当日、晩秋の肌寒い北海道を発った。まだじっとりした暑さが残る東京へと到着し、会場となるホテルへと向かった。午後3時前に、球団控室へ。広報対応の準備のため、全国各地を拠点にするスカウトの方々より先に入室して、その時を待った。
スカウトたちは三々五々、集結する。指名予想が掲載されたスポーツ紙に目を通しながら、シミュレーションをする。お互いの近況報告に、既に来年のターゲットの話題に花を咲かせている一団もある。おもむろに、ネクタイを結び直す者もいた。皆が思い思いに、1年の成果が試される育成ドラフトを含めた約3時間の闘いへと挑んでいったのである。
元教師のスカウト「どこも来るな」
北海道日本ハムファイターズの1巡目入札は、天理高校の達孝太投手だった。会議開始の約15分前。各スカウトが一堂に会した前で、その名は告げられたという。そこから約30分後、単独での入札となり、1位指名での交渉権が確定した。ファイターズは12球団の中で、2番目に入札選手をアナウンスされた。その時点で、重複していなかった。
残る10球団からも達投手は入札されなかった。担当は、熊崎誠也スカウト。
「その日、その時に初めて1位は達投手でいくことを知ったからね。驚いたなぁ。そこからは『ほか、どこも来るな、どこも来るな』と思っていた」
高校教諭などを経て、スカウトへと転身して13年目で、初めてドラフト1位をカバーすることになった。昨年の担当選手はゼロ。達投手を含めて、今年5人を担当するという運に恵まれたのである。