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単独1位指名・達孝太(天理)の誕生日とファイターズの不思議な縁、編成トップの“決断の真相”とは<広報が明かすドラフト裏側> 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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posted2021/10/21 11:06

単独1位指名・達孝太(天理)の誕生日とファイターズの不思議な縁、編成トップの“決断の真相”とは<広報が明かすドラフト裏側><Number Web> photograph by KYODO

ドラフト1位指名のあいさつを受け、撮影に応じる天理高の達孝太投手と日本ハムの大渕スカウト部長(左)、熊崎誠也スカウト

 良縁と信じる太い幹は、枝葉へと連なっていく。

 今春、木田コーチと長きにわたり親交が深い在京テレビ局スポーツ部のIさんとメットライフドームで再会した時のこと。今年のセンバツの話題になった。達投手が躍動した大会である。Iさんから「天理高校の達投手のお母さんをよく知っていて」と話に花が咲いたことを思い出す。

 そのIさんからは指名直後にメールをいただいたが、さらに縁がつながっていく事実が記されていた。

 Iさんによれば、達投手の父親は野球経験者。東北楽天ゴールデンイーグルスの三木肇二軍監督とは少年時代の所属チームが同じで、後輩としてプレーしたことがあるという。三木監督は北海道日本ハムファイターズに現役選手、指導者として在籍。中島卓也選手、杉谷拳士選手、西川遥輝選手ら現在の主力クラスをルーキーイヤーから育成した功労者の1人である。

 個人的な側面も含めて、不思議な縁の連鎖に運命の1日と呼ばれるドラフトを体感することができた。

編成トップが口にした「誕生日」の真相

 そしてドラフト前日へと話を戻す。札幌ドームの広報らが控えている部屋での記憶を振り返る。翌日に控えたドラフト会議の話題になった時のこと。ある編成トップの方と、皆で何げない会話をしていた。その時点でスカウトも知り得ず、もちろん広報レベルでは知る由もない「秘中の秘」の1位入札する選手のヒントが、もたらされたのである。

 その編成トップの方はおもむろに、つぶやいた。

「やっぱり誕生日って、大事だな」

 いたずらっぽく口を開いたその時、視線を落としていた先にはスポーツ紙。ドラフト当日に、誕生日を迎えるノースアジア大明桜高の風間球打投手の記事だった。今年のドラフトの目玉、注目選手の1人。もちろんファイターズも高い評価をしていたことは、周知の事実だった。その場に居合わせたスタッフたちと「やっぱり風間投手ですかね」などと、少し色めき立った。

 しかし、達投手だったのである。

 ドラフト終了直後、同行したF広報と「あの『誕生日』は、達投手を指していたんですね」などと話して納得し、答え合わせを終えた気でいた。後日、F広報との統一見解が合っているのかどうか、その編成トップの方へと尋ねてみた。

 すると、それが見当違いの誤答だったのである。

【次ページ】 「3月生まれ、まだ17歳だよ」

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