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ロナウドはオモチャに歓喜、モドリッチはすすり泣き、シェフチェンコは「勝った」と叫んだ…バロンドーラー“初めての”受賞秘話 

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posted2021/10/21 06:00

ロナウドはオモチャに歓喜、モドリッチはすすり泣き、シェフチェンコは「勝った」と叫んだ…バロンドーラー“初めての”受賞秘話<Number Web> photograph by L’Équipe

シェフチェンコ、ロナウド、メッシ…バロンドールは数々のスター選手が欲してやまない栄誉ある賞だ

 受賞者への告知とインタビューは、どれだけ秘密裏におこなえるかが最重要課題である。とりわけインターネットやSNSが発達した今日では、クラブやサッカー協会、印刷所、選手の知人や友人、家族などに情報が伝わるのを防ぎ、発表の日を静かに迎えるのは以前よりずっと難しい。結果を知る人間、あるいは知っていると思い込んでいる人間から、秘密が漏れてしまうことも少なからずある。ノタリアニが語る。

「2006年にファビオ・カンナバーロ(レアル・マドリー)が受賞したときは、それが逆に役に立った。僕がマドリードに到着した日のトゥットスポルト(イタリア3大スポーツ紙のひとつ)は、ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)の受賞を伝えた。完全な誤報だったが、誰もがトリノでFF誌の記者の到着を待っていた。カンナバーロ本人も、自分は受賞していないと思っていた」

1万4000人からの祝福

 1986年、ウクライナのFF誌通信員であったアブデイ・ピアノフは、イゴール・ベラノフ(ディナモ・キエフ)に受賞を伝える使命を託された。ピアノフが振り返る。

「公式発表の前日に、私はベラノフに受賞を伝えた。話を聞いて彼が最初にしたのが、通りを横切って酒屋に駆け込み、すべてのシャンペンを買い占めることだった。同じ日にキエフで、シーズン終了を祝うセレモニーがあり彼も出席した。そこには旧ソビエト連邦のお偉方が全員出席していて、ディナモ・キエフの幹部たちにこの場で受賞を発表することを求められたベラノフは、どうすればいいか私に聞いてきた。私はパリのFF誌編集部に電話をした。同誌の公式発表までまだ12時間あったが、彼らはこの場で公表することを快諾してくれた。会場には1万4000人の大観衆が詰めかけており、世界に先駆けてベラノフの受賞を知った彼らの熱狂は頂点に達した」

 誰もが人よりも先に結果を知りたがる。代理人のジョルジュ・メンデスは、クリスティアーノ・ロナウドが有力候補にあがるたびに、幾度も結果を電話で尋ねてきた。彼ばかりではない。クラブの広報や選手のスポークスマンも、多くの関係者を引き連れて授賞式に参加し、大々的に栄誉を祝うために結果を事前に知りたがった。

【次ページ】 モドリッチのすすり泣き

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