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【ソフトバンク2位指名】正木智也(慶応大)、本人に聞く「早川さん(楽天)から打った二塁打がきっかけだった」
posted2021/10/11 19:10
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
〈“流しのブルペンキャッチャー”として全国各地、数多くのアマチュア選手を取材、実際にボールを受けてきた筆者。その筆者が「ドラフト中間予想」で野手部門1位に選んだ正木智也(慶応大)。本人はプロ野球をどのくらい意識しているのだろうか?(投手1位編に続く)〉
うわっ、そこに構えるか……と思った。
5月16日、東京六大学の慶應大対立教大。1対1の均衡がなかなか崩れない終盤8回。2死一、二塁、打席には慶應大の4番・正木智也(内野手・182cm87kg・右投右打・慶應高)を迎えていた。
立教大の黒岩陽介捕手(3年・174cm73kg・右投右打・静岡高)が、正木智也の足元に潜り込んでミットを構えた。マウンド上には7回からリリーフに上がった左腕・宮海土(3年・174cm83kg・左投左打・國學院栃木高)。代わりばなから140キロ前半の速球を繰り出して、そのクロスファイアーの球威でファウルを打たせ、カウントを稼ごう……それが狙いだったのかもしれない。
「ピッチャーのちょっとしたしぐさを見逃さない」
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しかし、この日の宮投手は力んでいるように見えた。リーグ優勝を賭けて、「目前の敵」である慶應義塾と同点のマウンドなのだから、無理もない。力余って、気持ち体が早く開き、勝負球の「ストレート」がシュート回転を帯びていた。
「後からビデオを見て、僕もちょっと意外だったんです。まさかインコースに来るとは思わなくて。外攻めだと思ってたんで」
時節柄、正木には電話で話を聞いた。初めての相手と、顔を見ないで話をするのはとても難しいのに、正木は、「プレーボール」から折り目正しく、過不足のない表現と語り口でストーリーを始めてくれた。聡明さがこれっぽっちも嫌みに聞こえない。こんな学生野球の選手が、もっといてもよい。
「あの時、宮君がプレートを一度外したんです」
同時に、「正木アンテナ」にビビッと来るものがあったという。
「投げにくそうにしてるな……と思いました。そう思うことで、気持ち的にちょっと優位に立てたように思います。ああいうチャンスには、特にメンタルが大事ですから、負けないようにピッチャーのちょっとしたしぐさとか、表情の変化とか、見逃さないようにして」
結果、正木は宮の投球を「待ち構える」ことができた。
正木の足元を狙った速球は、わずかに真ん中寄りに入り、ひと振りで捉えた打球は左中間スタンドのいちばん深い所に飛んでいって、決勝の3ランとなった。
早川さん(現・楽天)から打った二塁打
今年4月上旬、同じ神宮球場で行われた「東京六大学・社会人対抗戦」。
Hondaのルーキー左腕・片山皓心(175cm84kg・左投左打・桐蔭横浜大)から放ったスタンドに突き刺さるような一撃も、やはり左中間だった。