プレミアリーグの時間BACK NUMBER
〈違約金相場は225億円説〉マンC移籍かなわず残留もファンは信頼… ハリー・ケインは「トッテナムひと筋」の道を歩むか
posted2021/09/06 11:01
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
北ロンドンに住む友人が、チャットアプリで「飲みに行こう。乾杯の1杯目はおごる」と声を掛けてきたのは8月29日の夕方。一緒にプレミアリーグ順位表の写真も届いた。首位は、彼がサポートするトッテナム。黒星発進だった昨季とは違い、今季は無失点で3連勝とパーフェクトな滑り出しを見せている。
紙吹雪が飛び出すクラッカーのイラストが入った写真の順位表は、アーセナルが最下位。トッテナムの地元ライバルは、対照的に無得点のまま3連敗を喫していた。
但し、彼の上機嫌には他にもう1つ理由があった。同日の3節ワトフォード戦(1-0)で、ハリー・ケインが今季リーグ戦での初先発を果たしていたのだ。目立った活躍があったわけではない。10点満点で評価すれば、可もなく不可もない6点といったところ。しかし、今季はもういないと思われた生え抜きの主砲が、白いユニフォーム姿で戦ったフルタイムは、ファンにとって大きな意味を持つ。
SNSを通じた残留公表から4日後、ヌーノ・エスピリト・サント新体制1年目に新たな希望を覚えたファンは、昨季7位から更に順位を下げる今季を覚悟していた、筆者の友人だけではなかっただろう。
「俺らの仲間」との声、奇跡騒動が嘘のよう
試合を終えたケインが、5万7000人を越す観衆を集めたトッテナム・ホットスパー・スタジアムで、「俺らの仲間」と謳われながらピッチを降りる姿を見れば、今夏に本人の移籍志願を含むマンチェスター・シティ移籍騒動があったことなど嘘のようだ。
またスタメンとしては、2試合連続の出場でもあった。8月26日、UEFAカンファレンスリーグのプレーオフのパソス・デ・フェレイラ戦(3-0)でも、トッテナムのホームにはケインを讃える歌声が響いた。
左サイド深くからの折り返しをファーストタッチでコントロールし、2タッチ目で右下隅へと先制ゴールを決めた前半9分のこと。自身の今季1得点目は、チームが若手主体で臨んだアウェイでの初戦(0-1)で負った借金を帳消しにするゴールでもあった。