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〈違約金相場は225億円説〉マンC移籍かなわず残留もファンは信頼… ハリー・ケインは「トッテナムひと筋」の道を歩むか
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/09/06 11:01
マンC移籍ではなくトッテナム残留となったハリー・ケイン。北ロンドンを沸かせられるか
最少スコアでの3勝は、監督がモウリーニョのままであればネガティブな見方をされていたかもしれない。うち2試合は、デレ・アリのPKと、ソンのFKが決勝点となっていた。
3割台のボール支配率で勝ち点3を奪ったシティ戦が示すように、エスピリト・サントのサッカーは「堅実」が基本である。カウンター一本槍というわけではないが、昨季まで指揮を執ったウルブズでも、格上との対戦などで限られたチャンスをものにしてポイントを取る試合が、彼のチームの真骨頂と見受けられた。
より結果に対する要求のレベルが上がるトッテナムでは、時には中盤まで下がって攻撃の起点にもなりながら、前線でタメを作り、ゴール前では決定力に物を言わせることのできるCFの存在が欠かせない。
来年1月の移籍は現実味が乏しいワケ
その第一人者であるケインが、昨季プレミアで得点王とアシスト王に輝いた実力を発揮し続ければ、2~3カ月後には再び移籍騒動が始まるとする説もある。残留を決めたケインのメッセージに、「この夏は」という一言が含まれていたことも根拠の一部。確かに、経営実権を握るダニエル・レヴィー会長との駆け引きに敗れた無念と、タイトル獲得に近づく執念を感じさせる表現ではある。
とはいえ、来年1月の移籍は現実味が乏しい。シーズン半ばの移籍市場では、どのクラブも夏の市場以上にトップクラス流失を避けたがるのが通例だ。では、来夏は?
一般的には、今夏よりも盛況な市場が予想されている。プレミアに満員のスタジアムが戻ってきたように、コロナ禍での規制が緩まるとともに、欧州各国でクラブの売上高にも回復が見込まれているためだ。
怪物ハーランドの違約金が“約100億円”に下がるだけに
しかし、だからと言ってケインにとっての移籍市場にも同じことが言えるかどうかは怪しい。むしろ、現時点でのトッテナムよりタイトル獲得に近い環境へと移る機会を逃したように思えてならない。
近年苛まれているハムストリングや足首の怪我に泣くことがなかったとしても、来年7月にまた1つ歳をとるケインは、来季開幕を前に29歳になる。ピーク年齢の真っ盛りよりも、ベテランの入り口と理解される年齢だ。
同時に、やはり移籍金額の高低に影響する現契約の期間も、今夏の残り3年から1年少なくなる。その来夏には、同じ7月に誕生日が来ても22歳のアーリング・ハーランドが、高額ではあっても約100億円の契約解除違約金でボルシア・ドルトムントから買い取れる状態にある。
今回の市場では、トッテナムに約150億円の移籍金を提示したのみに終わり、巷でケイン獲得に煮え切らなかったと言われたシティ陣営には、グアルディオラの得意でもある「偽9番」を駆使して今季を戦い抜けば、同じ世界屈指のCFでも7歳若いハーランドを獲得できるという計算があったとしても不思議ではない。