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〈違約金相場は225億円説〉マンC移籍かなわず残留もファンは信頼… ハリー・ケインは「トッテナムひと筋」の道を歩むか 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2021/09/06 11:01

〈違約金相場は225億円説〉マンC移籍かなわず残留もファンは信頼… ハリー・ケインは「トッテナムひと筋」の道を歩むか<Number Web> photograph by Getty Images

マンC移籍ではなくトッテナム残留となったハリー・ケイン。北ロンドンを沸かせられるか

約225億円はその気になればシティが払えた額

 チーム最大のスターを売ることはあっても“売らされる”ことはない敏腕経営者のレヴィーが、どの程度の金額であれば売却を検討する気になったかは想像の世界でしかないが、一般的に言われている1億5000万ポンド(約225億円)は、その気になればシティが払えた規模である。

 真のトップクラスとしては未だ潜在能力の域にあるジャック・グリーリッシュの獲得に際し、アストンビラに約150億円を支払ったクラブとしては、現時点でははるかに格が上のケインと引き換えに要求されても不当とは言えない額でもあった。

 にもかかわらず、シティはレヴィーに2度目の条件提示は行わなかった。その間、同じく一線級のCFを必要としていたチェルシーはロメル・ルカクを買い戻し、地元ライバルのマンチェスター・ユナイテッドには、待遇面も世界最高級のクリスティアーノ・ロナウドが復帰することになった。

 欧州大陸側のメガクラブでも、元トッテナム監督のマウリシオ・ポチェッティーノが率いるパリ・サンジェルマンが、ロナウドと同格のリオネル・メッシを迎え入れ、昨季も興味が伝えられたレアル・マドリーは、そのパリ・サンジェルマンからのキリアン・ムバッペ引き抜きにご執心。今季終了後には、これと言った競争相手がいない状態で、ハーランドの獲得に動ける可能性が高まっている。

ケインの前に延びる「トッテナムひと筋」の道

 そこで見えてくるのは、ケインの前に延びる「トッテナムひと筋」の道。まだ当人は、2018年に結んだ長期6年契約の更新を急ぐ気持ちにはなれずにいることだろう。

 だが、このまま開幕ダッシュに成功して、まずはトップ6争いを演じながらカップ選手権で勝ち進めば、移籍の意思を固めた当人の心も少しずつほぐれてくるはず。既に予選突破に一役買ったカンファレンスリーグは、欧州3番手の大会ではあるが、優勝を飾れば、栄えある初代チャンピオンとしてのタイトル獲得にもなる。

 今季のプレミア優勝争いや、来季のCL復帰は厳しいと言わざるを得ない。ただトッテナムで試合を重ねる日々が続けば、ケイン個人としては、クラブ歴代得点王であるジミー・グリーブスを追い越す日も近づいてくる。

 そして、忠誠心旺盛なサポーターたちは、“ワンクラブ・マン”の誕生をリアルタイムで目撃する栄誉にあずかる可能性が増す。今日のプレミアにおいて、ことワールドクラスへと成長した生え抜き選手に関しては、その現役キャリアを「我がチーム」だけで見届けることは、優勝の喜びを味わうこと以上に難しいと言える。

 なおケインが移籍したがったシティに加入したグリーリッシュは、自らのワールドクラス化をも求めて、20年間を過ごしたアストンビラを去っている。

 トッテナムひと筋だったレジェンドには、2012年に現役を退いたレドリー・キングという比較的新しい例もあるが、キャリアの終盤は怪我に泣かされ続ける不本意なものだった。歴代最高の“ワンクラブ・マン”を挙げるとすれば、1955年までのMFとしても、1958年から16年間の監督としても、ビル・ニコルソンまで遡る。

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