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謙虚な20歳GK谷晃生が明かす、“五輪→A代表への率直な思い”「ちょっと分かりづらくて申し訳ないんですけど…」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2021/08/31 17:01
東京五輪で全6試合に出場した谷晃生。W杯アジア最終予選で、日本代表メンバーに初選出を果たした
「五輪では大きな舞台でプレーすることの責任感や、一つひとつのプレーで神経を使うことを経験しました。そこを自分のノーマルなベースとしていければ、より高いレベルでプレーすることができると感じました。クオリティの高い試合のなかで、自分の良さであるアグレッシブさを失わずにやっていくことが必要だと思います。そのために、日頃の練習から取り組んでいくことが大切だと、オリンピックで感じました」
「どこが成長したかとよく聞かれるんですけど……」
53年ぶりのメダルには手が届かなかったものの、濃密な2週間強を過ごした。かけがえのない経験をしたのは間違いない。ただ、自分のなかの変化を問われると、すぐには答えが出てこないのだ。
それもまた、当然なのだろう。東京五輪の3位決定戦の3日後にはもう、J1リーグの舞台へ戻った。自身の変化を感じる間もなく、アップデートを繰り返しているような状態なのだ。
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「五輪が終わってどこが成長したかとよく聞かれるんですけど、五輪を経験したから、A代表に選ばれたから、自分が急に変わることも急に成長することもないと思っています。もちろん、五輪で得たものは確実にありますし、地道に頭のなかで考えて、身体で表現するということを、ひとつずつやっていくことが成長につながっていくと思っています。なので、本当に地に足つけて、自分らしく一歩一歩やっていくことが必要だと感じています」
客観的視点に立つと、落ち着きや余裕の「幅」が広がっている。攻撃側のプレーをギリギリまで見極め、適切な判断を導き出している。慌てることがないのだ。国際舞台でシビれる経験を積んだ選手の、特徴的な変化と言えるだろう。
ここでも谷は苦笑いをこぼす。
「うーん、まあ……僕自身は代表と湘南を分けているわけではなくて、1試合ずつ成長していけるように取り組んでいます。何か急に変わったなとは感じていないんですけど。まあホントにそこは、周りの方に評価してもらえればいいのかな、と思います」
「プレーの重みは、確実に変わってきている」
彼を見つめる視線は、間違いなく変わっている。17年のU-17ワールドカップに出場した将来性豊かなGKであり、20年シーズンのガンバ大阪から湘南への期限付き移籍で出場機会をつかみ、成長速度を一気に上げている谷への注目と期待は、東京五輪を経てはっきりとした高まりを見せている。
「注目していただくのは有難いことだと思いますし、注目度が上がれば上がるほど自分への期待値も上がると思うので、そのぶんプレッシャーがくることも分かっていますけど、そういうなかでよりそのプレッシャーをプラスにとらえてやっていくことが必要だと思います。五輪が終わってチームでプレーしていくときに、自分が代表選手というふうに見られるのは当たり前だと思いますし、その期待感はより大きくなっていくと思うので、そこに対する責任感は自分のなかで増している部分はあります。一つひとつのプレーの重みは、確実に変わってきているのかなと思います」