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「勝てないと甲子園で優勝できねえぞ」監督に言われ…斎藤佑樹が明かす“初めて駒大苫小牧を意識した瞬間”
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/21 11:04
15年前の夏、100年に1度の伝説の名勝負を制した斎藤佑樹
「2年の夏と秋、三高に対して斎藤の出した答えがコールド負けと完封という、端から端までの極端な結果だから、3カ月で成長したとみんなは言う。でもあのコールド負けは、斎藤が自分を出し切れなかった心の問題だったと思うんです。心のコントロールができれば2年の夏だって完封できたかもしれない。今もそうですよ。ウチが2006年に優勝したことも、斎藤が田中君に勝ったことも事実ですから……実際に激変した彼を見ている僕からすれば、精神的にパッとはまることがあれば、プロでも劇的に変わることはあると期待しています」
27歳の斎藤に問う「もう一度できると思うか?」
青いハンカチを手に、疲れを感じさせない涼しい顔で948球を投げ抜いて、早実に夏の初優勝をもたらした18歳の斎藤。彼はその1年前の届辱的な敗戦をプラスに転じ、考え、工夫を凝らし、3年の夏を勝ち抜いた。和泉監督が言うように、あの夏にできたことをもう一度できると思うかと訊いてみたら、27歳の斎藤はこう言った。
「その答えが出たら、今、苦労していないでしょうし、それができると思っているから、今、苦労しているんだと思います。今まで野球をやってきた中で、小学生のときから、いいボールを投げられたという感覚は自分の中に存在していて、今も体に残っている。それをコンスタントに出せるようになれば、あの夏の自分を越えられるはずですよね。近づくんじゃなくて越えたいと、本気でそう思っているんです」
あの夏、屈辱の先には歓喜があった。エースを覚醒させた二つの夏の記憶――苦しい夏を越えれば見たことのない景色が広がっていることを、斎藤佑樹は知っている。
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