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サッカーがゆえの多様性…米3部リーグ、デトロイト・シティFCが破綻した都市で成し遂げた連帯の物語<ロックのカリスマも支援>
posted2021/08/22 11:00
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph by
L’Équipe
アメリカ合衆国のプロサッカーといえばメジャーリーグサッカー(MLS)であり、ベースボールやアメリカンフットボール同様に下位リーグとの間に昇格や降格はなく、同じチームが毎シーズンタイトル争いをタイトル争いを繰りひろげるシステムを取っている。
そんなアメリカで、地方の小クラブにすぎないデトロイト・シティFCが、その社会性と連帯性において確固たる成功を収めた。彼らが成し遂げたサクセスストーリーとはいったい何であるのか。フランス・フットボール誌5月11日発売号でマキシム・オバン記者がレポートしている。(肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
(田村修一)
2019年9月22日、コロナウィルスが全世界に蔓延しあらゆるスポーツの大会が中止になる数カ月前のこと、およそ7000人のサポーターが赤と黄色のレプリカユニフォームを身にまとい、太鼓を手に発煙筒を焚いてスタンドに陣取っていた。キックオフの瞬間、彼らはマフラーを高く掲げ、チームを讃える歌がスタジアムに響き渡った。雰囲気はまるでアンフィールドでのヨーロッパカップ戦のようである。場所はデトロイト市郊外の田園地帯。収容人員7933人の小さなキーワーススタジアムに本拠を置くデトロイト・シティFCは、アメリカ合衆国4部リーグであるセミプロのナショナル・プレミア・サッカーリーグ(NPSL)の公式戦で、ニューヨーク・コスモスをホームに迎えていた。
復興途上にある街のプロチーム
毎試合6300枚以上のチケットをホームゲームで売っているデトロイト・シティFCにとっては、ほとんど通常と変わらない観客数である。自動車不況の深刻な影響を受け、さらに2008年の財政危機に追い打ちをかけられたデトロイト市は、この10年間人口流出が止まらないばかりか多くの企業が街から撤退していった。2013年の市の財政破綻がそれに拍車をかけた。
「広大な市のなかでそれぞれの街が孤立している」とシーン・マンは語る。
元市会議員であり、若いころ何度もヨーロッパに渡りサッカーの虜になったマンは、街の住民を結集するため2010年に地域のアマチュアリーグを立ち上げた。