プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ベルギーの大砲がクラブ史上最高額の146億円でチェルシーに帰還 10年前の「ネクスト・ドログバ」から「元祖ルカク」への期待
posted2021/08/22 17:01
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
今夏、チェルシーは得点源の補強が火急の課題だった。そして、新センターフォワードとしてクラブ史上最高額となる9750万ポンド(約146億円)の移籍金で、世界でも屈指のストライカーが獲得された。
にもかかわらず、8月12日にインテル・ミラノからのロメル・ルカク移籍が発表された西ロンドン界隈は、意外なほど静かに今季開幕を迎えている。
ルカクの出戻りはさほど大騒ぎとはならなかった
これが、昨季途中から第1希望と目されていたアーリング・ハーランドを、ボルシア・ドルトムントから獲得というのであれば、地元ファンは間髪容れずに「プレミア優勝だ!」と気炎を上げていたことだろう。トッテナムからハリー・ケイン獲得なら、ロンドン市内ライバルのエースを奪っただけで天下を取ったような勢いだったはずだ。
あるいは噂のあったロベルト・レバンドフスキであっても、チーム得点数大幅アップの皮算用が始まっていたに違いない。バイエルン・ミュンヘンの主砲は、32歳だった昨季もブンデスリーガで41ゴール。一方のチェルシーではティモ・ベルナー、オリビエ・ジルー(今季ミラン移籍)、タミー・エイブラハム(今季ローマ移籍)のストライカー3名が、プレミアリーグで合わせて16得点に終わっていた。
だがルカクの出戻りは、過去2シーズンのセリエAで23ゴール、24ゴールという数字を残していながら、さほど大騒ぎとはならなかった。
筆者の周りでも、同じ50代の年配サポーターたちは「新ドログバ」の期待とともに祖国のアンデルレヒトから加入した18歳が、プレミア無得点のままあっさりチェルシーを去ることになった当時の記憶が消えていない。
個人的にも、出場機会を求めての移籍は理解できたが、ファンを自認して移籍してきたモンスター級のティーンエイジャーにはチェルシーでポジション争いに挑み続けて欲しい、という気持ちがあった。
しかしながら、そうしたサポーター感情を抜きにルカクの再獲得を眺めれば、プレミア経験もあるトップクラスを最前線に擁する今季のチームに、じわじわと期待も高まる。
ホームで順当にクリスタルパレスを下した開幕戦(3-0)後、BBCテレビ解説アラン・シアラーとイアン・ライトが、移籍の2日後で出場できなかったルカクの加入を理由に、揃ってチェルシーを優勝候補筆頭に挙げたのも頷ける。