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サッカーがゆえの多様性…米3部リーグ、デトロイト・シティFCが破綻した都市で成し遂げた連帯の物語<ロックのカリスマも支援> 

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posted2021/08/22 11:00

サッカーがゆえの多様性…米3部リーグ、デトロイト・シティFCが破綻した都市で成し遂げた連帯の物語<ロックのカリスマも支援><Number Web> photograph by L’Équipe

2020年秋シーズンにタイトルを獲得したデトロイト・シティFC。21年にはNISAレジェンドカップも獲得し、リーグ内では強豪のポジションにいる

 デトロイト・シティFCの提示する理念は、人種差別への反発を鮮明に打ち出しているドイツのFCザンクトパウリを想起させる。

「もちろん彼らと私たちでは歴史も違えば街も違う。でも彼らの主張や信念には共感できる」とシーン・マンは言う。

 同じサッカーへの愛、サッカーを通して実現したい理念がマンを突き動かし、2018年5月19日ザンクトパウリをデトロイトに招待しての親善試合が実現した。スタジアムは新記録となる7200人の観客で埋まり、試合は6対2でザンクトパウリが勝利した。

「素晴らしい思い出だ。同じ週末にパンクロックのフェスティバルも開催され、街全体が大きく盛り上がった」とシーン・マンが回想する。

 クラブはさらなるサポーターの獲得に乗り出した。3年にわたりケンワース・スタジアムを地域住民で満たした後に、1936年にフランクリン・D・ルーズベルト大統領により建設された老朽化が進むスタジアムの改修のため、参加型ローンを募ることを決めたのだった。

「その結果、74万ドルが集まり、計画したすべての改修を実現した。資金を提供した499の投資家は、予定より2年早く翌年には資金の回収ができた」とクラブの共同経営者のひとりが誇らしげに語る。

ロックスターの救いの手

 ところがコロナ禍の蔓延により、昨年7月にデトロイト・シティFCはクラブの資本をサポーターたちのために活用することを決める。これには予期せぬ手が差し伸べられた。ロックスターのイギー・ポップが支援を申し出たのだった。

「彼はこの近く(ミシガン州マスキーゴン)の出身で、私の友だちの友だちなんだ。でもまさか私たちのために、ビデオクリップを作ってくれるとは思わなかった。ちょっと信じられなかったよ」とシーン・マンが事情を説明する。

 これによりクラブは、アメリカサッカー史上最高額となる120万ドルを、およそ4000人の出資者から集めた。クラブの名前はアメリカ国内はもとより海外にも広まり、とりわけアングロサクソン系メディアが注目した。

【次ページ】 クラブの成長は理念の実現とともに

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