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「クラブもなければ仕事もない」CL王者チェルシーの守護神エドゥアール・メンディが職安に通った6年前の無職の日々
posted2021/08/15 11:00
text by
フランス・フットボール誌France Football
photograph by
L’Équipe
エドゥアール・メンディは、この5月に2度目のチャンピオンズリーグ(CL)優勝を果たしたチェルシーの守護神である。現在29歳にして、押しも押されもせぬヨーロッパトップクラスの彼が、6年前にはどこにもクラブを見つけられずにポール・アンプロワ(公共職業安定所=日本のハローワークに相当)に通っていたことをご存じだろうか。はじめてプロ契約を結んでから5年でヨーロッパの頂点に立つまでのシンデレラストーリーとそこに至るまでの苦難の日々は、まさに光と影のコントラストをなしている。
『フランス・フットボール』誌4月27日号では、そんなメンディにトマ・シモン記者がロングインタビューをおこなっている。今日に至るまでの軌跡を、ネガティブな感情を一切示すことなく誠実かつ真摯に辿ったインタビューを、前後2回に分けて掲載する。(全2回の1回目/#2に続く・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)。
(田村修一)
若者に可能性を示した苦難の道のり
――数カ月間失業に喘ぎ、途方に暮れていた2015年のエドゥアール・メンディが、これからCL準決勝でレアル・マドリーと対決しようとしているエドゥアール・メンディの隣に座っていると想像してください。互いにどんな言葉をかけあいますか?
「2015年の僕は2021年の僕に向かってこう言う。『君は幻想だ』と。2021年の僕は2015年の僕に『落ち込むな。実は君は何も手放してはいないんだ』と言うだろう」
――自分をひとつの模範だと思いますか?
「自分を模範だと思うのは難しい。僕は人より秀でているとは思わない。だが困難だった僕の道のりは、本当に成し遂げたいと思い続けながら目的達成のためにすべてを捧げれば、最後には素晴らしいことを実現できる、努力にみあった成功が得られることを示した。模範ではないが、人々のモチベーションを後押しする道のりだったといえる。プロ契約に至るまでのルートから外れている若者たちも、僕が辿ってきた道のりを見れば、きっかけさえあれば望みを実現できると思えるだろう」
――多くの挫折を味わっていますが、いちばん最初はいつでしたか?