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宮市亮は「世界一」の人間性でチームメイトもファンも魅了 度重なる大怪我に苦しんでもザンクトパウリに愛された理由《Jリーグデビューはいつ?》
posted2021/08/14 17:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
プロサッカー選手にとって、移籍はつきものかもしれない。
別れには様々な形がある。次へステップアップしようとする選手に理解を示しながらも素直に受け入れられないこともあるし、「まぁ、しょうがない」と割り切ることのできる別れもある。
宮市亮が、6年間在籍したザンクトパウリを離れて横浜F・マリノスへ移籍した。
「最初の日からザンクトパウリに熱狂をもたらした」
パウリサイドからすると、やはり怪我の多さは目を瞑れない問題だ。加えて、ティモ・シュルツ監督が志向するサッカーはクラシカルなウイングのポジションがないのも影響したと言われている。
プロの世界だ。クラブにはクラブの事情がある。
とはいえ、ザンクトパウリの人々にとって宮市との別れはあまりにも寂しく、簡単に処理できるものではなかった。
「世界で一番素敵な人間」
元チームメイトのマッツ・メラー・デーリ(現ニュルンベルク)は、宮市のことをそう評していた。ザンクトパウリに加入したのは2015年6月のこと。アーセナルからの移籍が決まったとき、当時スポーツディレクターを務めていたトーマス・メッグレは「性格的に素晴らしい青年」と話していたが、その言葉は何一つ間違っていなかったのだ。
ザンクトパウリの公式ホームページは、宮市と契約延長しないことが決まった直後に、「アリガトウ、サヨウナラ」という見出しで、感謝と惜別の気持ちを表していた。
「リョウは最初の日からザンクトパウリに熱狂をもたらした。選手としてだけではなく、人間としてもチームに欠かせない選手だった。怪我が彼を苦しめた。それでもミヤイチは一度も諦めることがなかった。どんなときも、怪我と闘い戻ってきた。いつでもどこでも親切で、フレンドリー。ザンクトパウリは、キミのこれからのすべてがうまくいくことを願っている。特に健康を!」
クラブだけではない。宮市を間近で見続けてきた『ハンブルガー・モルゲンポスト』紙は、「コロナ禍だからしょうがないとはいえ、ミヤイチがファンからの拍手も受けずにクラブを去るなんて……。こんな別れはフェアじゃない」と、悲しみにあふれる印象的な記事をアップしていた。