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「マジ、ヤバかったです」菊池雄星がメジャー行の飛行機で大号泣した“花巻東高校監督からのビデオレター”
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byNanae Suzuki
posted2021/08/13 11:01
東北勢初の日本一まであと一歩と迫りながら涙をのんだ高校時代を菊池雄星が振り返った
『岩手の雄星から日本の雄星へ。
そして、世界の菊池雄星へ。
想像もしないモンスターが現れ、何度も打ちのめされ、挫折しかけるだろう。だからこそ、「自分のミッションと未来への呪文」を持たなければならない。雄星は能力だけでなく、人格という劔や仲間でできた盾など最高で最強なアイテムをすでに入手している。
だから心配するな! 苦しい時は少し後ろを振り返ればいい』
「このムービー、飛行機の中で初めて見たんですけど、マジ、ヤバかったです(苦笑)。この人、なぜ泣いているんだろうって思われるくらい、泣きました。
メジャーに行くことが目標じゃなく、子どもたちのこと、社会への影響を考えて、と言ってもらった監督のあの言葉が蘇ってきて、堪えられませんでした。監督は『大谷(翔平)を育てるときには雄星という参考書があったけど、雄星のときにはそれがなかった、だから上手く育ててあげられなかった』って言うんですけど、僕も監督も、そのときのベストを尽くしてやってきたと思っていますし、僕は順番を考えたことはありません。大谷は同じ花巻東でも入れ替わりなので、そんなによくは知らないんですけど、大谷にもそういうものが染み込んでいるところはあると思います。大谷とは違う性格、違う人間だと、監督にもよく言われますけど、帰るところは僕と一緒なのかもしれません」
佐々木監督が育てた“兄弟”
高校時代の菊池がメジャーから高い評価を受けたことで、岩手からメジャーへの道がつながっていることを示し、その事実が大谷の夢を育んだ。そう考えると菊池と大谷は、佐々木監督が育てた“兄弟”なのかもしれない。長男の菊池、次男の大谷――男気に溢れ、責任感の強い長男と、やんちゃで、要領のいい次男。菊池にそう言ったら、「僕のほうがやんちゃだと思いますけどね、だって好きなことをやってきましたから」と口を尖らせてみせた。それは、いかにも“兄貴”らしい言葉だった。