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勝ち方がすごすぎる…レスリング金メダル須崎優衣(22)が吉田、伊調を超えた“パーフェクト”な記録とは?〈開会式の旗手でも話題〉
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byJMPA
posted2021/08/10 11:01
レスリング女子50kg級にて圧倒的な強さで金メダルを獲得した須崎優衣。
須崎が最初に「私もオリンピックに行きたい」と口にしたのは2010年。小5のときだった。スポーツ好きの子供だったら、一度は口にする言葉かもしれない。しかし年を重ねるにつれ、現実を知り、やがて多くの者は子供のときに描いた夢を口にしなくなる。
しかし、須崎は違った。地元のレスリングクラブの指導者から「優衣はアカデミーに行った方がもっと強くなれると思う」と背中を押され、中2からJOCエリートアカデミーへ。実家には年に2回しか帰れず、学校に通っているとき以外は朝も夜も練習漬けの日々。一息つけるのは消灯間際のわずかな時間だけだった。のちに須崎は「最初は練習についていくのが精一杯だった」と語っている。
苦しかったこともあるだろう。辛かったこともあるだろう。それでも、須崎は大の負けず嫌い。自室のベッドの天井には、2015年の全日本選手権決勝で入江に敗れ、2位になったときの賞状を貼っていた時期がある。寝るときにはその賞状を見て「クソッ」と呟き、起きて視界に飛び込んできたときには「よし、今日も頑張ろう」と気合を入れた。
吉村コーチは思い返す。
「中2で親元を離れ、彼女は『オリンピックで金メダルを獲る』という強い気持ちを持ってアカデミーに入校した。みんな持っているけど、彼女は人一倍そういう気持ちを持っていた」
伊調の五輪V4を塗り替えられるポテンシャルがある
小さな体に無限大の闘争本能。須崎の「絶対勝つ」という言葉は強い信念と執念に裏打ちされている。そんじょそこらの絶対勝つとは意味が違う。須崎の表彰式の際、艶やかな着物姿でプレゼンターを務めた伊調馨は、一番高い表彰台に立つ後輩にビクトリーブーケを渡しながら声をかけた。
「次も、またその次も頑張ってね」
まだ22歳。大きな大会になるほどオールフォール&テクニカル勝ちが多い“ミス・パーフェクト”は、伊調が記録したオリンピックV4に並び、さらにその記録を塗り替えるだけのポテンシャルを持ち合わせている。
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