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「たかが世界選手権」「空手は五輪競技じゃないから」 不調も“パワハラ”も越えて競技普及に尽くした植草歩を待っていた厳しい現実
posted2021/08/08 17:05
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
8月7日、空手女子組手61kg超級予選が行なわれた。
各組5名が総当たりで対戦し、上位2名が準決勝に進出する仕組みのもと、A組の植草歩は2勝2敗の成績で1次リーグ敗退が決まった。
初戦のシルビア・セメラロ(イタリア)との試合は1分過ぎに中段蹴りで2点を奪ったが、その後、蹴りに行って倒され、そして突きで3点を獲られ逆転を許し、最後は3-4で敗戦。2戦目も敗れたあと、3戦目に5-4で勝利。
最後のソフィア・ベルルツェワ(カザフスタン)戦は武器とする中段突きを決めるなどして5-1で勝利。ただ、もう勝ち上がれる可能性は残されていなかった。
「前日、一昨日と、組手が勝てていなかったので、きちんとここで勝って、日本の空手が強いと、日本の方に空手の魅力を伝えたいと思っていたんですけど」
結果を残せなかったことに、悔いがあった。
今大会で採用された空手をアピールしたいという思いはかなわなかった。
「空手はオリンピックの競技じゃないから」
空手がオリンピックで採用されたことで、人生に大きな影響を受けてきた。
大学を卒業後、教師となって空手を続けることも選択肢にあった。でもいくつかの学校の教師に相談すると、難色を示された。その理由として語られたのは「空手はオリンピックの競技じゃないから」だった。オリンピック種目ではないから並行して取り組む理解が得られない、というのが答えだった。
一方で、空手の五輪競技採用を目指す動きが本格化し、大学4年のときには依頼を受けてPRの記者会見に出席。
「あの舞台で優勝します」
と、あえて宣言した。
その後も空手界を代表するように、さまざまなイベントへの出演など、PR活動に参加した。
その中で、オリンピックに出ることは植草にとっても、夢となっていった。
「オリンピックに採用されるなら、競技を続けたいと思います」