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「ビキニパンツを着用しなければならない」規定は誰のため? アスリートを“性の対象”として扱うスポーツ界の問題はどこへいくか
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2021/08/07 11:03
東京五輪では体操女子団体に出場したドイツのユニフォームが話題になった。スポーツ界で女子アスリートをめぐる問題は解決に向かっているのだろうか
ユニフォームを選ぶ権利が選手にはある
ドイツ代表チームが提示したのは、選手には選択肢があるべき、という意見だ。スポーツに限らず学校の制服などの問題も想起されるが、パフォーマンスを発揮できる、そして自身にとって快適かつ心地よく着られるユニフォームを選ぶ権利が選手にはあるということを言っている。その観点に、競技団体も立脚しなければならない。その上で、たとえば陸上ではセパレート・タイプユニフォームを選択するのも、別の選択をするのも、選手本人の考え次第だ。
選手の話を聞くと、SNSでしばしば「撮られる対象として狙われないような恰好をすればいい」といった趣旨の、つまり着る方が悪い、という声が寄せられることがあるという。それは論外として(性的被害にあった人に、落ち度があったから、隙があったから、と言うのに等しい)、ビーチハンドボールの一件は、別の課題も浮き彫りにしている。
課題の解決へ向けて、少し前進した大会に
ユニフォームにスポンサーの名前などを入れる場所が決められており、これが女性の身体の特定の部分をクローズアップすることを狙いとしていることは明らかだ。つまり、競技団体に加え、スポンサーもこの件については無縁でいられない。そして映像なり写真なりを使用して、伝える立場もまた無関係な存在ではない。7月26日の記者会見で、オリンピックの国際映像を供給する「オリンピック放送サービス」のヤニス・エクサルコス氏が今大会の放送に関して「今までのように体の一部をクローズアップするようなものにはならない」と語ったという。
また、国内メディアの中にも、記事に使用する写真のセレクトで今までには気づかずにいた観点から選んでいるところも出てきている。
ドイツのユニフォームが注目を集めた今大会は、男女平等の問題、女性アスリートへの目線など、取り組まなければいけない課題の解決へ向けて、少し前進した大会であったように思える。