オリンピックへの道BACK NUMBER
「ダブルスを石川さんと戦えて、すごく心強いです」 卓球女子団体のカギを握る平野美宇にチームが伝えていたこと
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Matsunaga/JMPA
posted2021/08/05 12:25
卓球女子団体で決勝に勝ち進んだ日本チーム。経験豊富な石川、伊藤のなかで、平野がのびのびとしたプレーで活躍している
平野のプレーを引き出している伊藤、石川
卓球陣は平野がもてる力を発揮できるよう、事前に工夫してきた。
馬場監督は、平野が代表に決まってから実践してきたことをこう語っている。
「ずっと、おまじないのように、『あなたは大丈夫』と話して自信を持つようにしてきました」
コロナによって1年延期になっても、しばしば語りかけてきた。何度も繰り返される言葉は平野の心に刻み込まれていった。
そればかりが平野の生き生きとしたプレーを引き出しているわけではない。3人のチームワークが、支えとなっている。
そう思わせたのは、準決勝の最初の試合、ダブルスでの光景だ。
「ダブルスを石川さんと戦えて、すごく心強い」
第3ゲーム、得点で8−7と競り合う中、平野のレシーブが相手のミスを誘うと、石川は右手の人差し指を平野に向け、叫んだ。石川いわく「ナイス!」と叫んだという。
「読みがぴったりと合いました」
相手のストップ(レシーブ)が来る、もう一度ストップを選択してほしい。
石川が予測し、期待した通りの選択だったからこそ、「それで『ナイス!』って言いました」。
オリンピックという舞台でのその動作は、過去の大会にはない伸びやかさを感じさせた。そしてチームの雰囲気をも伝えてきた。
そのレシーブについて、「やることができてよかったです」と振り返る平野はこう語っている。
「オリンピックのために、石川さんとダブルスの練習をたくさんして、レシーブが大事になると」
「声をかけてくださったり、大事なところで思いきったプレーをしてくれて、ダブルスを石川さんと戦えて、すごく心強いです」