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<急逝から10年>「選手の気持ちを分かってやれる監督に」松田直樹の“願望”と「一緒にライセンス受講」を約束していた男の今
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/08/04 11:03
松本山雅で一緒にプレーしていた松田直樹(左)と北村隆二
「試合でできなかった課題を持ち帰って、選手と一緒に修正していって、できた喜びやできなかった苦しみも共有できて。そうしていくとチームがどんどん良くなっていって。選手、スタッフには本当に感謝しています。ここに来てから、日々勉強でした。テクニカルディレクターになっても日々、勉強。それは変わりません。チームが強くなっていくために後押しできればと考えています」
北村は噛みしめるようにそう言った。
「当たり前のプレーを当たり前にやれる人でしたからね」
自分の手帳をめくって「8月」になると、決まって予定を書き込むペンが止まるという。そして松田のことを思い出す時間にしている。
「普段でもマツくんを思うことって結構ありますよ。いい選手の基準というか、考え方というか、指導者としてそこは凄く役立たせてもらっています。あの人は当たり前のプレーを当たり前にやれる人でしたからね」
松田も将来、指導者になることを考えていた。
「俺がやるとしたら、選手の気持ちを分かってやれる監督になりたいかな」
生前の彼はそう語っていた。北村の監督像と重なるところを感じないではいられなかった。
松田直樹は、指導者になった姿をどう見てくれていると思いますか?
頭になかった質問をぶつけると、北村は口もとを緩めて言った。
「マツくんがですか? お前が監督やれんのかよって、きっとそんな感じじゃないですか。絶対そうですよ」
確かにそう言うかもしれない。でも言葉はそれだけじゃないはずだとも思えた。
雷は去り、雨は止んでいた。
明るくなった奈良の空に、松田直樹がいるような気がした。
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