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街中のパブが「ラストオーダー23時15分」決勝モードの営業に… イングランドEURO制覇で「自嘲」の時代は終わるか《現地発》
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/07/11 11:03
デンマークを下し決勝進出を果たしたイングランド。イタリアを撃破し、歴史を塗り替えられるか
イングランドの人々は、明るい未来に意識を向けさせる「サウスゲイトのイングランド」の決勝進出に、約1年半に及ぶ規制だらけのコロナ禍から抜け出す希望を重ねている。
3回を数えた全国的ロックダウンで鬱積したストレスやフラストレーションを、代表戦勝利の喜びとして発散している。予定では規制がほぼ全面的に解除される8日前の決勝に勝ち上がったイングランドは、ともすればシニカルやネガティブになりがちな国民感情に対する“ワクチン”だと言ってもよい。
街中のパブは“決勝モード”の営業が許される
決勝で対戦するイタリアは恐れるに足らずとまでは言えないが、それはイングランドの対戦相手にとっても同様だろう。
執念の守りを見せるジョルジョ・キエッリーニは36歳になっても最終ラインの要だが、準決勝では下がってチャンスメイクにも絡んだ今季プレミア得点王兼アシスト王のケインは、釣り出されればスターリングらに背後を突かれる嫌なFWに違いない。
中盤深部で試合をコントロールするジョルジーニョは、果敢なプレスに遭うと存在感が消える自らの弱点を知るチェルシーのチームメイト、メイソン・マウントと対峙する。
3トップの右サイドから決定的な仕事を見せるフェデリコ・キエーザには、左SBとして攻守両面で出色の出来を見せているルーク・ショーの対応が見込まれる。
そして、決勝のウェンブリーでは準決勝を上回る規模のイングランド・ファンが観戦を許されることは間違いない。満員の9万人に近い観衆が集まるだけでも、コロナ禍で夢のような話だ。当夜は、まだ事前の予約が必要ではあるが、街中のパブもラストオーダーが夜11時15分まで延長される。試合が延長戦に入る可能性を考慮し、普段よりも45分ほど長い“決勝モード”の営業が許されることになっているのだ。
準決勝までは自宅でテレビ観戦しながらの仕事で友人からの誘いを断ってきた筆者も、決勝の夜は地元の仲間たちと一緒に近所のパブで中継を見て、国をあげて「優勝するぞ!」と盛り上がるムードに飲まれてみたい。
1年半以上ぶりに足を運ぶパブで持つビールは、『バド・ライト』だろうか? わざわざこの国で飲もうとは思わなかったが、イングランドの「公式ビール」を務める今夏は、3頭の獅子が描かれている代表エンブレム入りのラベルに目を引かれる。
初めて訪れたロンドンで、パブに入るたびに履いていたジーンズに貼られていた“BUD LIGHT”のワッペンを、「なんだ、そのチョイス?」とからかわれたのは1989年のある日。まさか、バド・ライトを片手にイングランドを応援する国際大会決勝の日がやって来ようとは――。
55歳の住人の1人として、カモン・イングランド!