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松坂大輔の“輝かしい全盛期と切ない故障禍の記録” 「投げまくって鍛える昭和の大投手」という一時代の終わり

posted2021/07/11 06:00

 
松坂大輔の“輝かしい全盛期と切ない故障禍の記録” 「投げまくって鍛える昭和の大投手」という一時代の終わり<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama(2)/Naoya Sanuki

横浜高校、西武、侍ジャパン。松坂大輔の剛腕は野球ファン全員の記憶に残っている

text by

広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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Hideki Sugiyama(2)/Naoya Sanuki

 筆者の知人に、小学校時代、2歳年下の松坂大輔と多摩川の河川敷で野球をした経験がある人がいる。

「そのころから全然別ものだった」

 酔うと必ずその話をする。

 横浜高校、西武ライオンズ、侍ジャパン、ボストン・レッドソックス。松坂大輔はいろいろなユニフォームを着て、胸のすくような活躍をした。大げさな言い方をすれば、同時代を生きた野球ファンの心には「それぞれの松坂大輔が住んでいる」のかもしれない。

 しかし、ここ近年の松坂大輔の雄姿を見た人は、ほとんどいない。2015年にMLBからソフトバンクに日本球界復帰して以降、松坂は一軍公式戦では7シーズンで14試合しか投げていないのだ。

 見方を変えれば、それだけの長い時間、松坂大輔は「再起へ向けて苦しんできた」と言うことができるかもしれない。

98年甲子園から09年WBCまでの偉大な実績

 記録を子細に見てみると――松坂大輔の最盛期としてのキャリアは、1998年の甲子園に始まり、2009年のWBCで終わっている。この2つの劇的な「短期決戦」の間に松坂は飛翔して燃え尽きたのだ。

 記録をたどってみよう。

 ・1998年 春 甲子園 横浜高校
 5試5勝0敗5完投3完封45回43三振 率0.80
 ・1998年 夏 甲子園 横浜高校
 6試6勝0敗5完投3完封54回54三振 率1.33
 ・1999~2006年 西武ライオンズ
 204試108勝60敗72完投18完封1402.2回1355三振 率2.95
 ・2000年 シドニー五輪 日本代表
 3試0勝1敗1完投0完封27回25三振 率2.33
 ・2004年 アテネ五輪 日本代表
 2試1勝1敗0完投0完封16回20三振 率1.69
 ・2006年 WBC 日本代表
 3試3勝0敗0完投0完封13回10三振 率1.38
 ・2007~2008年 ボストン・レッドソックス
 61試33勝15敗1完投0完封372.1回355三振 率3.73
 ・2009年 WBC日本代表
 3試3勝0敗0完投0完封14.2回13三振 率2.45

横浜で春夏連覇、そして西武へ

 横浜高校3年の春夏の甲子園連覇。春夏合わせて11試合11勝0敗10完投、防御率1.00。夏の決勝はノーヒットノーランという、これ以上ない成績を引っ提げて松坂は、1998年のドラフトで3球団競合を経て西武ライオンズに入団する。

【次ページ】 WBCでの初代王者とMVP

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