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「清原とオレで…長嶋さんの悩む顔を見たくない」“日本人初の1億円プレーヤー”落合博満のオレ流移籍人生《43歳でも3億円》
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2021/09/06 17:01
1987年のシーズン、ロッテから中日へ移籍した落合博満。年俸は9700万円から1億3000万円にアップ
前年の96年オフ、西武の清原和博が死にたいくらいに憧れた巨人へのFA移籍が秒読み段階に。そうなると、一塁のポジションが被る落合はどうするのか? そのシーズン、42歳の元三冠王は8月末に死球を受けて左手小指を骨折するアクシデントに見舞われながらも、打率・301、21本塁打、86打点、OPS(出塁率と長打率を足し合わせた数値)・924 と年齢を感じさせない堂々たる成績を残していた。SMAPの香取慎吾や安室奈美恵が表紙を飾る雑誌『小学五年生』96年5月号では、唐突に「落合博満vs.ラモス瑠偉」のスペシャル対談が実現。子供たちが憧れるイチローや三浦知良ではなく、2人合わせて81歳の大ベテラン濃厚対談。ミニ四駆ニューマシーンスクープ記事を楽しむ小学生がついて来られたのかは謎だが、ここで落合は手加減なしのオレ流ガチンコ発言を連発している。
「子供のころから憧れ続けてきた職業につける人間が、この世の中にいったい何人いると思う? オレもラモスもそれを実現している数少ない人間でしょう。それを考えたら、もったいなくて『オレ、やーめた』なんて言えないもの」
「よく『若手を育てろ』とか『若手を使え』という人がいるでしょう。でも、プロの世界は人に育ててもらうものじゃない。自分で育って、自分で這い上がってくるものなんだ。それだけ厳しい世界なんだ」
凄い、これを読まされる『小学五年生』読者のその後の人生は大丈夫だろうか……なんて心配になってしまうほど、大人の世界の生々しい真実をぶちかますリアリスト落合。巨人軍相手にも一歩も引かず舌戦を繰り広げたのち、96年11月28日に「清原と自分の使い方で長嶋さんの悩む顔を見たくなかった」と、ミスターと並んでジャイアンツ退団会見を開く。
「リストラに負けない中年の星」3億円の2年契約
直後に野村克也監督率いるヤクルトと日本ハムが獲得に乗りだし、当初は同リーグのヤクルト移籍濃厚と言われながらも、12月12日には急転直下で日本ハムの背番号3のユニフォームを着て入団会見。