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ドラ1だった“78歳おじいちゃんコーチ”松岡功祐が独立リーグでノックを続けるワケ「私にも夢があるんですよ。それは…」
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byEijinho Yoshizaki
posted2021/07/20 17:02
御年78歳にして今もなおバットを振り続ける松岡功祐コーチ
「V9時代の巨人の方が強かったと思いますよ。なんでこんなにしつこい野球をするのか。そう思ってましたから。王さん、長嶋さんだけが打って活躍していたのではありません。選手個々人が野球を知っている。例えば1番、2番バッターはしつこくピッチャーに球数を投げさせるといったことを徹底的にやりきれる。ミスしたら川上監督がすぐ二軍に落とす。そんな集団がめちゃくちゃ練習するわけですから。なぜかって、王さん長嶋さんが一番練習するからですよ。他の選手がやらないわけにはいかない」
松岡はまた、「今の子たちはまず体格が良くなっている。栄養の知識、トレーニングの知識が私たちの頃とはまったく違いますよね」ともいう。
それでも……「V9時代の巨人の方が強い」とは、ちょっとした今の日本球界への「喝」ですか? 現場の最年長者としての。
そう聞くと「そんなことより、私自身に喝を下さい」と返ってきた。
「もっと叱咤をしてもらい、刺激をいただきたい」
「もっと叱咤をしてもらい、刺激をいただきたいですね。なぜかって、私にも夢があるんですよ。それは……NPBに戻ることです。もちろんコーチとして。あの素晴らしい世界にもう一度戻りたい。自分で自分を『年だな』と思ったことは一回もないんですよね。辛いとか、キツイとか、どっかが痛いということはないですから。年齢に触れると『ああこんなに年を取ったんだな』と思うことはあるにせよ」
選手と同じ夢を見ているのだ。一緒に汗まみれになりながら。そりゃ若いわけだ。
ただ元気なだけじゃない。松岡は、コーチとして自身にしかない個性を発揮している。
「選手からは、おじいちゃんと思われていますから」
火の国サラマンダーズの選手を「子どもたち」とも呼ぶ。
「甘いだけではなくて厳しいことも言ってくださる」
選手もまさにそう思っている。主将の瀬戸口外野手が続ける。
「まさに孫の年齢でしょうね。その距離感こそが、僕たちはとてもやりやすいんです。上から目線でもない、だからといって甘いだけではなくて厳しいことも言ってくださる。守備のミスの後でも、すぐにビシッと『グラブの向きがダメだ』という風に意見してくださる。指導者は言いたくないことのはずなんですけどね。それでいて面白いんですよね。構えずにスッと話を聞ける。一言が重い。結局は、“何でも聞けるコーチ”ということなんです。繰り返し言われるのは『一日一日をやりきれ』『それを継続しよう』という話ですね」