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ドラ1だった“78歳おじいちゃんコーチ”松岡功祐が独立リーグでノックを続けるワケ「私にも夢があるんですよ。それは…」
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byEijinho Yoshizaki
posted2021/07/20 17:02
御年78歳にして今もなおバットを振り続ける松岡功祐コーチ
「特に大分への遠征は厳しいですよ。当日移動で試合。3連戦の最終戦の後には、その日の深夜にバスで熊本に戻ってくるんですよ。私は細川監督が運転する車で阿蘇を通るルートから。運転はしてもらっていますけど、体力的には厳しいですよね。先日は、深夜の道で鹿と狸に出くわして、本当にびっくりしましたよ」
夜が遅ければ、朝も早い。試合のない日は9時から練習開始だ。グラウンドも自前ではないから、40分~1時間をかけて日ごとに複数の場所を転々とする。練習場の準備は選手自ら行う。選手たちの昼食は白米を炊飯器で炊いたものが球団から支給されるが、おかずは自ら持ち込む。
「私自身、ノックはまだまだ打てると思いますよ。どこも痛くないですから。まあ、それでも打球の衰えを感じることもありますよね。飛ばないな~って。特に外野に打つ時、飛距離が出なくなったと思うことはありますよ。ただ、どこかが痛くなれば退くべきでしょうが、どこも痛くないんですよね。それが」
「松岡コーチの上半身は“ゴツゴツ”してました」
なんでそんなに元気なんですか?
当然のごとく周囲からよく聞かれる。本人は「よく動いて、よく食べて、よく寝る。夕食は栄養のバランスに気を付ける程度で。それだけですね~」と答え、あまり詳しくは語らない。野球がとにかく楽しいから、それが続くのだと。
いっぽう、チーム内ではこんな話もしているらしい。キャプテンの瀬戸口が言う。
「朝、早起きして筋トレをしてから練習に来る、とおっしゃっていたことがあります。家にダンベルやおもりがあるらしいんですよね。一度、監督とコーチ陣、選手みんなで温泉に行ったことがあるんですが……松岡コーチの上半身は“ゴツゴツ”してましたよ。逆に『そりゃ外野にノックも打てるよな』と思ったくらいですから」
努力はあまり人に見せない。「長嶋茂雄さんがじつはめちゃくちゃ練習していた」という小話が好きなようで、何度も話してくれる。
そこに似せたか、さりげなく元気を見せる、ということもある。先に書いた「細川監督が運転する車で夜の山道を走った」という大分遠征の帰り道、同行した女性のチーム広報担当者が驚く出来事があった。
「私は自分の車を運転していたんですが、どうも細川監督と松岡コーチの車がすぐ後ろを走っていたらしいんです。ずっと気づかなかったのですが、熊本に着いた後、松岡コーチから『運転、上手いね~』と褒められたんです。ナイター後の当日移動という過酷な日程のなか、車内で休んでいらっしゃらなかったなんて、その体力にかなり驚きましたね」
今のソフトバンクとV9巨人、どっちが強いですか?
松岡は、もう一つよく聞かれることがある。
「今のソフトバンクと、V9の巨人どっちが強いんですか?」
自身は大洋で過ごした現役時代、V7までの巨人と対戦してきた経験がある。