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いよいよイングランドが“無冠の母国”に終止符か 個人技+連係+結束のハーモニーに“真の強豪国”感【EURO】
posted2021/07/05 11:03
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
REUTERS/AFLO
ロンドンの喧騒を離れたスリーライオンズが、すべてを解き放ち、最高の勝利を収めた。アンドリー・シェフチェンコ監督のもとでモダンな集団に生まれ変わったウクライナを相手に、イングランドは強者の風格ある戦いぶりで4-0と快勝。1996年大会以来となる欧州4強に駒を進めた。
Number本誌のEURO2020プレビューでも書いた通り、史上最高と言うべき力を備えるイングランドは開幕前、グループDをトップ通過する青写真を描いていたはずだ。そうなれば、決勝までの道のりで一度しか、聖地ウェンブリーを離れずに済む(そして実際に首位で突破)。その1回が、この日のローマでの準々決勝だった。
しつこい疫病の影響により、イタリア政府はイングランドからのファンの入国を認めず、スタディオ・オリンピコに集まった1万1880人の観衆のほとんどは、現地在住者たちだったという。試合を通して、ウクライナ・サポーターの声援の方が大きく聞こえたくらいだ。過去4試合のウェンブリーとは比較にならないほどに。
ドイツ戦の3-4-3ではなく、4-3-3に戻して
でも今のイングランドには、後押しの多寡に結果を左右されない、確固たる質がある。いやむしろ、何かとやかましい競技発祥地のうるさ型──「ジャック・グリーリッシュを先発させろ」とか、「もっと攻撃的に」とか──のもとを離れ、のびのびと自分たちを表現できたと見るべきか。いずれにせよ、そのパフォーマンスは圧巻だった。
今、イングランドでもっとも分別のあるリーダーとも言えるギャレス・サウスゲイト監督は、この試合でも自身の信念を貫いた。つまり何よりも重視したのは引き続き、バランスとハーモニーだ。
ドイツとのラウンド16で手応えを掴んだはずの3-4-3ではなく、それ以前の3試合で使っていた4-3-3に戻し、トップ下にメイソン・マウント(スコットランド戦でチェルシーの同僚ビリー・ギルモアと触れ合い、ギルモアが新型コロナに感染したため、マウントも隔離された)を復帰させ、右ウイングにはジェイドン・サンチョを初先発させた。