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EURO開幕直前にキャプテンのブスケッツが離脱 動揺するスペイン代表を救ったメンタルコーチの存在 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2021/06/22 11:00

EURO開幕直前にキャプテンのブスケッツが離脱 動揺するスペイン代表を救ったメンタルコーチの存在<Number Web> photograph by Getty Images

ルイス・エンリケが全幅の信頼を寄せるメンタルコーチのホアキン・バルデス(左)。初戦の前には選手たちと言葉を交わす姿が頻繁に見られた

 本大会へ向けた準備が滞ったことも、選手たちを不安にさせたに違いない。精神面でも戦術面でもチームの支柱であるキャプテンのブスケッツが合宿を離れたうえに、グループ練習がしばらく禁じられたのだから。

 また、突然かつ遅すぎるワクチン接種もストレスの種となったはずだ。

 サッカー協会は2カ月前から働きかけていたと言うが、スペイン政府は五輪代表選手に対する接種を着々と進める一方、EUROに出場するチームへの便宜は図らなかった。そこへブスケッツ感染の報が入り、慌ててワクチン提供を承認したことはよしとして、実際に接種が行われたのは11日である。

 仮に副反応が出て体調を崩すような選手がいたら、15日のスウェーデンとの第1戦を見送らざるを得なくなるかもしれない。

 ワクチンはヤンセンファーマ製(ジョンソン・エンド・ジョンソン)のもので、接種は1回で済んだ。しかし、十分な免疫が得られるまでには2週間ほど必要とされているため、グループステージ中はこれまでと同じリスクに怯えていなければならない。

選手に最大限のサポートを提供することが我々の狙い

 ルイス・エンリケ自身、大いに気を揉んだことだろう。

 だが「こんなときのために我々にはカウンセラーがついている」と彼は言う。メンタルコーチ、ホアキン・バルデスのことである。

「サッカーで一番大事なのは頭。次に、試合に勝つために必要なのがコンディションを整えた身体。とはいえすべてのカギを握るのは頭であり、それに関して我々は強い」

 ルイス・エンリケはメンタルコーチを自分のテクニカルスタッフの一員にしたスペイン最初の監督だ。バルデスとの関係はバルサBを率いた2008年に始まり、以来彼には全幅の信頼を寄せている。

 2018年の代表監督就任の際には、彼をこう紹介している。

「自分がこれまで監督した全チームに付いてきてくれた唯一のスタッフで、選手のために用意した選択肢だ。パフォーマンスを上げたいときや家庭の問題を相談したいときは彼のところへ行ってもらいたい。あくまで自主的に。選手に最大限のサポートを提供することが我々の狙いだ」

 果たしてブスケッツの一件以降、トレーニング中の選手たちと言葉を交わすバルデスの姿が頻繁に見られたそうだ。求められない限り自分から選手に助言しないのがバルデスのスタイルなので、選手の側から声をかけたのだろう。

 6月15日、スペイン代表は無事にスウェーデンとの初戦を終えた。スコアレスドローに終わり白星発進とはならなかったが、試合にしっかり集中できている選手たちのパフォーマンスは悪くなかった。続く19日のポーランド戦でも勝利を手にできなかったものの、すでにブスケッツはチームに再合流し、23日のスロバキア戦での出場が見込まれている。

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