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EURO開幕直前にキャプテンのブスケッツが離脱 動揺するスペイン代表を救ったメンタルコーチの存在
posted2021/06/22 11:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
スペイン代表監督ルイス・エンリケの特徴に“メンタル面の重視”がある。
例えば、今回のEUROでは期間中チーム内に新型コロナウイルスの感染者が出る可能性が考慮されるため、登録選手枠は26人まで拡大されたが(ベンチ入りできるのは従来どおり23人まで)、彼はメンバーを24人しか選ばなかった。
なぜか? と問われた際の返答はこれだ。
「選手の気持ちを考え、増やすのは1人に留めた方が良いと判断した。24人全員に試合に出るチャンスはあると感じていてもらいたい。自分もチームの力になれると念頭に置いて練習してもらいたい。登録選手が増えればスタンド観戦を強いられる選手も増えるが、我々の場合は1人だけ。“チーム”の観点から、それはとても重要なことだと思っている」
突然かつ遅すぎるワクチン接種もストレスの種に
そんなルイス・エンリケ配下の選手たちを動揺させる事件が大会開幕1週間前に起きた。セルヒオ・ブスケッツとディエゴ・ジョレンテのコロナ感染である。
ブスケッツは5月31日の合宿開始以降7度の抗原検査と1度のPCR検査をパスしていたにもかかわらず、6月6日のPCR検査で陽性と判定された。スペインサッカー協会が厳格な感染対策を講じ、しっかり実施していたはずなのに。
ジョレンテは8日の検査で陽性とされた。その後の検査で4度続けて陰性だったため「擬陽性」と結論づけられて11日にチームに戻ることを許されたが、「2人目」の衝撃は大きかった。
『エル・パイス』紙は、この状況を昨年8月のアトレティコ・マドリーにたとえている。COVID-19のせいで延期されていた2019-20シーズンのCL準々決勝RBライプツィヒ戦4日前にアンヘル・コレアとシメ・ブルサリコの感染が判明したときのことだ。
「あの状況は心理的な爆弾と言えた。選手の頭のなかは本当に試合ができるのか、自分も感染しているのではないかといった疑念でいっぱいになってしまう。そうなるとバブル方式で外部と隔離された環境は厳しい。ライプツィヒに負けた言い訳に聞こえるから今まで口にしたことはなかったが、誰も彼もが試合以外のことを気にかけていた」
これは、アトレティコ関係者の証言である。