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ジェイミーHCが目を光らせる「逆境において誰がタフか」ラグビー日本代表を苦しめたサンウルブズの“楽しむマインド”【601日ぶりの実戦】
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/06/14 17:04
田村優は同じキヤノン所属で、今季限りで退団が決まっているエドワード・カークと握手。試合後は両チームともに笑顔が目立った
日本代表の逆転トライは背番号21の元早大主将が演出した。スクラムハーフの齋藤直人だ。
後半11分の途中出場から巧みなパスと運動量でテンポを刻んだ齋藤は、敵陣ゴール前に迫った同24分、サントリーのチームメイトであるCTB中村亮土の意図に気付いた。
「ゴール前ということは分かっていました。亮土さん(中村)が、外側から気配を消す感じで入ってくる様子が分かりました」(齋藤)
中村は、ボールウォッチャーになったディフェンダーの死角から接点に仕掛け、守備網を切り裂こうとしていた。心身の強靱な中村らしいタフなプレー選択だった。
守備を切れるのか――齋藤は素早くディフェンスラインを見た。
「(サンウルブズの先発LOの)ウヴェさんと目が合ったので、『切れるな』と思って投げました」
視線を合わせられたヘルウヴェは瞬時の判断が遅れただろう。齋藤は狙い所にパスを放り、中村はウヴェに右肩を当てられながらも防御線を半身で突破。ゴールラインの先に片腕で楕円球を叩きつけ、逆転トライを奪った。
勤勉さもあるタタフの独走
日本代表の3トライ目は、後半修正したブレイクダウンのカウンターから生まれた。
サンウルブズがPGを返して同点(17-17)となった後半31分、日本代表はハイパントを捕球した相手に殺到。ブレイクダウンを制圧し、ボールを奪い返すと、背番号20のテビタ・タタフがすかさず下のボールを捕球して独走した。
東京・目黒学院高、東海大、サントリーと歩むタタフは、サモア出身らしいフィジカルに加え、日本人らしい勤勉な低いプレーもできる。学生時代からジャッカルの名手で、こだわりの強いブレイクダウンでの攻守交代から、左隅に3トライ目を決めた。
後半40分にもラインアウトのスローイングを決めた堀越が、安定したモールから自身2トライ目を奪取。勝負は決した。