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レバンドフスキに得点記録を抜かれたゲルト・ミュラーは何を思う? その偉大さとまだ破られていない“ありえない記録”とは
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/06/03 11:01
シーズン最多得点記録を更新したレバンドフスキ。最終戦で見せた執念のゴールだった
バイエルンで長くプレーするレバンドフスキは、偉大な先輩ゲルト・ミュラーを「唯一の存在」として最大級の敬意を表していた。バイエルンにとってどれだけの意味を持った選手かを、誰よりも深く理解していた。
「ゲルト・ミュラーが歴史的なパフォーマンスでチームに貢献したことを知っているし、1971-72シーズンに記録を打ち立てられたことへ最大限のリスペクトを持っている。この記録が、僕の今後の人生にどんな意味を持つのかは、まだわからない。40ゴールで並んだのも特別なことだった。この記録に到達できるなんて想像もできなかった」
レバンドフスキが超えたのは、ただの数字ではない
レバンドフスキは最終戦後、ルンメニゲとともにアリアンツ・アレナにあるバイエルンミュージアムへ足を運んだ。そして「4EVER GERD(永遠のゲルト)」と書かれたTシャツをウッシー夫人に手渡したのだ。数字の4を用いたフォーエバーとしたのは、「40ゴール」という偉大な記録を打ち立てたミュラーへのリスペクトの証だ。
今回レバンドフスキが超えたのは、ただの数字ではない。ドイツサッカー界が誇る偉人が築き上げた確かな足跡であり、歴史そのものなのだ。時代を超えて誇り高きレジェンドが戦い合い、ひとつの決着はついた。だが、これがラストマッチではない。
ブンデスリーガ通算得点数に注目すると、ゲルト・ミュラーは14シーズンで365得点。一方、レバンドフスキは11シーズンで277得点だ。
年間30得点のペースでいけば、3年後にはこの記録を打ち破る日がくるかもしれない。“ありえない記録”を破れることを、すでに証明して見せたのだから。
「記録を破ることができる選手がいるとしたら、それはもうロベルト自身だけだね」
同僚のドイツ代表MFヨシュア・キミッヒは、そう語った。
シーズン42得点? 通算ゴール数? 通算得点王回数?
戦いはまだまだ続いていく。新しい次元の扉を開いたレバンドフスキが来季以降どんなプレーで、どれだけゴールを積み重ねていくのか。楽しみしかない。