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レバンドフスキに得点記録を抜かれたゲルト・ミュラーは何を思う? その偉大さとまだ破られていない“ありえない記録”とは 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/06/03 11:01

レバンドフスキに得点記録を抜かれたゲルト・ミュラーは何を思う? その偉大さとまだ破られていない“ありえない記録”とは<Number Web> photograph by Getty Images

シーズン最多得点記録を更新したレバンドフスキ。最終戦で見せた執念のゴールだった

 1965年にブンデスリーガ初昇格を果たしたバイエルンは、1968-69シーズンに初優勝。そして、70年代にUEFAチャンピオンズカップ(現・UEFAチャンピオンズリーグ)3連覇を果たしたことで、ヨーロッパでもトップクラブとしての地位を確固たるものにした。

 ともに一時代を築いたベッケンバウアーは、「ゲルト・ミュラーはサッカー史のなかで類を見ない点取り屋だった。彼のゴールによってFCバイエルンは国際舞台へと駆け上がることができた。彼が起源なんだ。私にすれば、彼こそがFCバイエルンの歴史で最も偉大な選手で、彼とプレーできたのは大きな幸運だった」と、その当時を振り返っていた。皇帝が大絶賛するほどの存在である。

親愛なるロベルト、40ゴールでもいいんじゃないですか?

 ゲルト・ミュラーが、いま、どこで、何をしているかご存じだろうか。

 昨年11月に75歳の誕生日を迎えたが、実はアルツハイマー型認知症を患い、6年前から介護施設で暮らしている。1年前までは会話をすることもできたし、ウッシー・ミュラー夫人が施設を訪問すると喜びの表情を浮かべ、少し外出することもできた。しかし、新型コロナウイルスの影響で介護施設への訪問は禁止になってしまった。

 現在、その健康状態は芳しくないという。ウッシー夫人は欠かさず訪れ、愛すべき夫を支え続けている。そんなウッシー夫人が、地元紙で次のように答えていた。

「ゲルトは、『俺が史上最強だ』なんてことを一度も考えたことはありません。いつでも謙虚で、遠慮深く、控え目でした。2人を比較することはできません。私は、ロベルトはアスリートでゲルトは芸術家かなと思っています。これまで記録が破られなかったことを驚いていたんですよ、あの人は。だから、記録を破られても受け入れたでしょう。そして一番に祝福したと思います」

 それでも、妻としてはやっぱり思うところがあるのだろう。「ゲルトの記録が残る方がそれはいいですよ。親愛なるロベルト、40ゴールでもいいんじゃないですか?」と言って優しく笑った。

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