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箱根駅伝11年ぶりの優勝へ、今季の早稲田はいつもと違う? 「本当にチャンスが来たんじゃないかなと思っています」
posted2021/06/03 17:05
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Yuki Suenega
10000mで27分台の記録をもつ大学生ランナーは、かつては在学中から世界大会に出場するほどの実力をもった選手だけ。ほんの一握りに過ぎなかった。もちろん今も27分台を出すのは簡単なことではないが、現在は以前ほどは珍しいことではなくなったのも事実だろう。
それでも、その27分台ランナーが、同時期に同じ大学のチームに複数人在籍するのは、かなり珍しい例といっていい。以前には設楽啓太・悠太兄弟が東洋大在学中に27分台をマークしたことがあったが、3選手も在籍しているのは、大学駅伝史上初めてのことだ。これをやってのけたのが早稲田大学だ。昨年12月の日本選手権で、中谷雄飛、太田直希(ともに現4年)が大台に突入すると、今年4月10日には井川龍人(3年)がチーム3人目の27分台ランナーになった。
「確かに初めてのことかもしれませんが、秋になったら、27分台を5人ぐらい抱えるチームが出てくるんじゃないかなと思っています。駒澤さんなんかがそうなると思いますよ」
相楽豊駅伝監督はいたって冷静に現状をとらえている。たしかに、駒澤大もすでに田澤廉(3年)、鈴木芽吹(2年)の2人の27分台ランナーを擁し、唐澤拓海(2年)もあと一歩まできている。だが、相楽監督の言葉は「でも……」と続く。
「うちはうちで、千明(龍之佑、4年)とか、まだ何人か27分台が行けると思っています」
その相楽監督の言葉を裏付けるかのように、5月20日から23日に開催された関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)では、むしろ27分台トリオ以外の選手の活躍が目立った。
「三浦が出ていない3000m障害は、優勝が絶対条件」
4日間フル稼働だったのは、2年生の菖蒲敦司。1500mと3000m障害に出場し、それぞれの予選、決勝と4日間で4レースがあり、連日トラックを駆け回った。
1500mでは、同級生の三浦龍司(順大)にラストスパートで引き離されたが、2位と奮闘。先に仕掛ける積極性も見せた。
そして、最終日の3000m障害決勝では、疲労を抱えながらも勝負強さを発揮した。
「3000m障害は、三浦が出ていないので、優勝は絶対条件かなとずっと感じていました」
ラスト700mで先頭に立つと、追い風に乗って後続をぐんぐん引き離し、自己ベストで有言実行のタイトルを手にした。
昨年度、コロナ禍の自主練習期間でスピードの強化に取り組んだというが、その成果が2年目に発揮されたわけだ。