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シャフリヤール・藤原英昭師がダービーで直線の“想定外”に顔をしかめたワケ「『あちゃ~』って思いました」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/06/02 11:01
日本ダービーで4番人気ながら鼻差で優勝したシャフリヤール。藤原英昭師と福永祐一は長く共に戦っている
直線に入ったシャフリヤールに「『あちゃ~』って」
バスラットレオンが先頭のまま馬群は直線に向いた。すると、ロスなく経済コースを回っていたエフフォーリアが自然と、そしてアッと言う間に前との差をつめた。
「良いぞ」と思って見ていたのが鹿戸調教師。伸びを欠くサトノレイナスとは対照的に、ラスト300メートル手前でエフフォーリアは先頭に立った。その様を見た時、鹿戸調教師は「気持ち早いかな……」と感じた。しかし、それは決して批判的な意味ではなかった。指揮官は続ける。
「人気を背負っていたし、下手にジッとして前が詰まる方がよくありません。武史の判断は間違いだったとは思っていません」
先述したように「道中はエフフォーリアを見ていた」と言う藤原英調教師だが、さすがに直線に入ると、自らの馬に視線を移した。すると、前が壁になっているシャフリヤールの姿が目に飛び込んだ。
「『あちゃ~』って思いました。ここまでは全て予定通りに来ていたけど、最後の最後で想定していなかった態勢になり、正直、厳しいかと思いました」
共同通信杯は、勝てば皐月賞、負ければ毎日杯
ここで語った「ここまでは全て予定通り」の“ここまで”とは、レースの道中に限った話ではなかった。自らの管理馬には「最初に入厩した際に必ず跨る」という藤原英調教師。シャフリヤールも例外ではなかった。そして、その時に「ダービーを狙うべき馬だ」と感じたという。
「だからダービーから逆算して予定を組み立てました」
新馬勝ち後、いきなり重賞の共同通信杯(GIII)を使ったのも「東京競馬場でレベルの高い相手との競馬を経験させるため」だった。3着に負けたのは誤算かと思いきや、その点については次のように語る。
「キャリア1戦での挑戦でしたからね。勝てれば良いけど、負ける可能性も充分に考えていました。だから勝てば皐月賞、負ければ毎日杯というつもりで出走させました」
結果、毎日杯へ向かい、勝利するのだが、このあたりに関しても「毎日杯なら勝てると思ったし、勝てば皐月賞をパスしてダービー一本に絞ろうというのも戦前から想定していた通り」だったのだ。
それが「ここまでは全て予定通り」という言葉の真意だった。