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シャフリヤール・藤原英昭師がダービーで直線の“想定外”に顔をしかめたワケ「『あちゃ~』って思いました」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/06/02 11:01
日本ダービーで4番人気ながら鼻差で優勝したシャフリヤール。藤原英昭師と福永祐一は長く共に戦っている
武史は「世界レベルのジョッキーになれる逸材」
こうして出走したダービーだったが、最後の直線で前が壁になるシーンを目の当たりにして、調教師は一瞬、顔をしかめた。
しかし、騎乗していた福永騎手は、6年前の香港で惜敗した彼とは違った。この6年の間、彼は毎年100以上の勝ち星を積み重ねた。そして2018年にはワグネリアンを駆って念願の日本ダービー初制覇を飾ると、コントレイルでダービー2勝目をマークした昨年は、3冠制覇を含む年間134勝のキャリアハイを記録した。
ダービー2勝の余裕なのか、直線で前が壁になっても福永騎手が慌てる事はなかった。1頭分だけ外に出し、前の馬をパスした後はひたすらに真っ直ぐ追った。すると、自然と進路が開けた。そして、最後はエフフォーリアをハナだけ捉えて先頭でゴールに飛び込んでみせた。
福永騎手は共同会見で「褒められた騎乗ではなかった」と自らを戒めたが、直近の4年で3度目のダービー制覇は運や偶然で出来る偉業ではない。
一方、藤原英調教師は言う。
「上手に乗ったのは武史の方。彼は久しぶりに現れた世界レベルのジョッキーになれる逸材だと思います」
相変わらず福永騎手には厳しい姿勢を貫くが、これは同騎手の師匠である北橋元調教師のそれとも似ている。それだけ信頼関係があり、期待をしている証なのだろう。
新しいダービー馬が今後どのような路線を走るのかは分からないが、いずれ世界へ飛び出すかもしれない。その際は是非、福永騎手で挑めれば、と勝手に想像してしまう。誰が何と言おうと他にダービーを3勝以上している騎手は武豊騎手しかいないのだから。