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シャフリヤール・藤原英昭師がダービーで直線の“想定外”に顔をしかめたワケ「『あちゃ~』って思いました」
posted2021/06/02 11:01
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Satoshi Hiramatsu
「祐一もまだまだやなぁ……」
6年前の香港で、呟くようにそう言ったのは栗東で開業する藤原英昭調教師。2015年4月26日、香港・シャティン競馬場で行われたクイーンエリザベスII世カップ(GI)に管理するステファノスを送り込んでいた。同馬はこのレースでブレージングスピードの2着に惜敗。その晩の残念会の席で、指揮官はそう言ったのだ。
この残念会に出席し、その言葉を向けられたのが福永祐一騎手。数時間前にはステファノスの手綱を取ってレースに臨んでいた。
藤原英調教師にそう言われ、唇を噛む同騎手に追い打ちをかけるように、調教師は続けて言った。
「“エイシンプレストンの歓喜を再び”と思っているであろう君らの気持ちも分かっているから乗せているんだけど、なかなか世界レベルになってくれないな……」
エイシンプレストンは2001年から2003年までの間に5度、香港へ飛び、3回GIを制していた。藤原英調教師が言った「君ら」とは、その当時、現地へ行ったメンバーを指していた。5回全てで騎乗した福永騎手や、やはり毎回現地で調教をつけていた藤原和男調教助手、マスコミの立場である私も含まれていた。藤原和男調教助手は藤原英調教師の実弟で、エイシンプレストンの北橋修二厩舎が解散後は藤原英厩舎で働いていたのだ。
戦前から盛り上がりを見せていた日本ダービー
それから6年が過ぎた2021年。5月30日、東京競馬場で東京優駿(GI)、いわゆる日本ダービーが行われた。
2年ぶりに有観客での開催となった3歳馬の頂上決定戦は、無敗の皐月賞馬や牝馬の参戦もあって戦前から盛り上がりをみせた。
1番人気に推されたのはエフフォーリア。美浦・鹿戸雄一厩舎のこの馬はデビューから皐月賞まで負け知らずの4連勝。管理する鹿戸調教師は戦前、次のように語った。
「変わらず順調に来ています。能力の高い馬なので2400メートルもこなしてくれるでしょう」
単勝は1.7倍。圧倒的な支持を得た。