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【日本ダービー】シャフリヤールはなぜエフフォーリアに勝てたのか 「彼も今日は悔しくて眠れないでしょう」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2021/05/31 11:45
シャフリヤール(奥)が1番人気のエフフォーリアにわずかに先着し、福永祐一は日本ダービー連覇を遂げた
福永「つかまえるのは難しいかなと思いました」
一方、3、4コーナーで馬群の内にいて、自然と後ろに下がる形になっていたエフフォーリアの前が、直線入口、ラスト500m付近でスムーズに開いた。エフフォーリアはそこから力強く末脚を伸ばした。
ラスト400m地点では、外のサトノレイナスと、馬場の真ん中から伸びるエフフォーリアの一騎討ちになるかに見えた。
横山も当然サトノレイナスが相手と見たのだろう。右ステッキでエフフォーリアを叱咤し、ラスト300m付近で先頭に躍り出た。そのまま外のサトノレイナスと、後続を突き放しにかかる。
その4馬身ほど後ろの馬ごみにいたシャフリヤールは、一度は外から抜け出しをはかったが、「ちょっと苦しくなって外にモタれた」(ルメール)というサトノレイナスの後ろを通って内に進路を切り替え、スパートをかける。
「ラスト300mぐらいで進路を確保してからの伸びは素晴らしかった。エフフォーリアとサトノレイナスが抜けていたのでつかまえるのは難しいかなと思いました。前が止まったわけでもないのに、素晴らしい瞬発力を発揮してくれました」
どちらが勝ったのか、まったくわからなかった
そう話した福永を背にしたシャフリヤールは爆発的な末脚を繰り出し、ラスト100mを切ったところで内から先頭のエフフォーリアに並びかけた。
外のエフフォーリアと内のシャフリヤールが激しく叩き合って首の上げ下げになり、並んだままゴールを駆け抜けた。
両馬とも2分22秒5のダービーレコードで走り切った。
福永も横山も、ガッツポーズをしなかった。
スタンドから見ていてもどちらが勝ったのか、まったくわからなかった。コロナ禍での有観客のレースでは、ゴール前で拍手が沸き起こることが多いのだが、このときは、みな拍手をする余裕などなく、かといって大声を出せない状況だったので、小さな驚きの声を上げて見守るしかなかった。