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【日本ダービー】シャフリヤールはなぜエフフォーリアに勝てたのか 「彼も今日は悔しくて眠れないでしょう」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2021/05/31 11:45
シャフリヤール(奥)が1番人気のエフフォーリアにわずかに先着し、福永祐一は日本ダービー連覇を遂げた
「横山武史君は、素晴らしい騎乗だったと思います」
内のシャフリヤールが、僅か10cmだけ前に出ていた。福永は、自身の勝利を、出迎えた担当厩務員から知らされた。
「正直、いい騎乗ができたとは思えないのですが、馬に助けられました。最後は紙一重でしたね。運も作用しました。自分も経験していますが、無敗のエフフォーリアに騎乗していた横山武史君は大変な重圧を感じていたと思う。道中はずっと彼の位置を確認していました。素晴らしい騎乗だったと思います」
44歳の福永はそう振り返り、22歳の若武者の騎乗を讃えた。
ワグネリアンで制した18年のダービーは、初勝利までの最多タイ記録となる19度目の挑戦であった。エピファネイアに乗って、武のキズナの2着に敗れたときは大きな無力感に襲われ、「騎手としてではなく、調教師としてダービーを目指そうかな」と思っていたというが、一度勝つと、前述したように、この4年で3勝をマークした。ダービーには「勝ち方」があるからなのか、武も1998年にスペシャルウィークでダービー初勝利を挙げると翌年連覇し、四位洋文も07年にウオッカで初勝利を挙げると連覇を果たした。
「ワグネリアンとの経験が自信を与えてくれた」
福永のダービー3勝は、5勝の武豊に次ぐ歴代単独2位の記録だ。
ダービーを2勝した経験が生きたかと問われ、福永はこう答えた。
「ワグネリアンでダービーを勝った経験が、自信を与えてくれました。その勝利があったからこそ、こうしてその後に2勝できたのだと思います」
シャフリヤールで新馬戦を勝ったとき「この馬でダービーに行きたい」と思ったのも、ダービーを勝ったことによって磨かれた「肌感覚」によるものだった。
皐月賞と大阪杯を勝ったアルアインの全弟で、今後も活躍が期待される。
「人気に応えられず申し訳ありません」
一方、これが2度目のダービー参戦で、勝てば戦後最年少制覇だった横山は、レース後、うつむき加減にこう話した。