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ドラ2で独立Lの星→“フル回転しすぎ”後の低迷を経て… 又吉克樹が“与田竜のセットアッパー”で復活【週刊セパ記録】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2021/05/25 11:00
独特のサイドハンドから繰り出すボールで相手を抑え込む又吉克樹。中日にはなくてはならないピッチャーだ
又吉克樹は環太平洋大学から2013年に香川に入団した。独立リーグに入団する選手の多くはNPBのドラフトにかかることを目指しているが、そんな中でも又吉は目の色が違っていた。
1年目から13勝を挙げMVPを獲得。11球団からドラフト指名を前提とした「調査書」が球団に送付されるなど、大きな注目を集め、独立リーガーとしては史上最上位のドラフト2位で中日に入団した。
当時の香川球団職員はこのように語っていた。
「又吉選手は選手として優れていただけでなく、人間としても素晴らしかった。私たちのことを忘れずに、翌年の香川の開幕戦には花輪を送ってくれた。そういう選手だからNPBでも活躍したんでしょう」
独立リーグ全体の期待を背負って入団した又吉は1年目から67試合9勝1敗2セーブ24ホールド、防御率2.21という好成績を残す。以後、中日救援投手陣の主力として信頼を集めた。
2015年のキャンプで見かけた珍しい光景
2015年2月、北谷町の中日キャンプの昼下がり、グラウンドに隣接したソフトボール場で、筆者は珍しい光景を見かけた。
三塁付近に又吉、浅尾拓也、吉見一起の3投手が集まり、一塁付近に立つ近藤真市投手コーチの構えるミットにボールを投げ込むのだ。近藤コーチは3人の球の回転をチェックしてアドバイスをしていたが、又吉の投じる球は手元でぐんと伸びていて、浅尾や吉見よりも勢いがあって近藤コーチが捕りにくそうだったのが、強く印象に残っている。
それにしても又吉はフル回転しすぎた。2017年の前半は、先発と救援を掛け持ちして6月までに73イニングを投げ、規定投球回数に達していた。まるで昭和の大エースのようだ。
投手起用には定評のあった森繁和監督だが、個人的には「これは長続きしないのでは」と思ったものだ。後半は救援に戻ったものの、救援投手の球数がシーズン1000球前後なのに対し、この年の又吉は1759球に上った。